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平成21年3月 第2351号(3月4日)

学生が身につけるべき力とは? 第14回FDフォーラム開く

 (財)大学コンソーシアム京都は、去る二月二十八日、三月一日の二日にかけて、京都市伏見区の龍谷大学において、FDフォーラム「学生が身につけるべき力とは何か―個性ある学士課程教育の創造」を開催した。

 一四回目を迎える同フォーラムには、全国から一〇〇〇名を超える関係者が参加。一つの会場には入りきらず、メイン会場の映像を流すサテライト会場を二つ設けた。
 若原道昭龍谷大学長、運営責任者の松本和一郎龍谷大学教授の挨拶の後、シンポジウムに移った。テーマは、このたびのフォーラムと同じ「学生が身につけるべき力とは何か―個性ある学士課程教育の創造」。シンポジストに、結城章夫山形大学長、石川憲一金沢工業大学長、田中毎実京都大学教授、コーディネーターに木野 茂立命館大学教授が登壇。それぞれのプレゼンテーションから始まった。
 まず、結城学長が山形大学の経営改革について発表。学長に就任後、「教養教育」を全面に出し、初年次導入教育の必修化、コア科目の設定と選択必修化などを行い、「教員が教えたい科目ではなく、学生が学ぶべきことを大学の責任で提供する」ことを全学に呼びかけた。また、中期計画とは別に学長マニフェストとして「結城プラン」を策定し、一年ごとに改善するPDCAサイクルを導入していることを紹介した。
 続いて、石川学長が内外からも評価の高い金沢工業大学の取組事例を紹介。同大学では、教育理念と教育内容、そして、それを達成する組織が、PDCAサイクルを基に整合性を持って結びついている。現在は「人間力」の向上にも力を入れているが、それもまず人間力の詳細な定義と意義が設定され、それを向上する「修学ポートフォリオ」、などの支援システム、「科学技術者倫理」といった教育内容が理念と直結する。また、一義的な正解が決まらない問題に取り組む「プロジェクトデザイン教育」や、キャリア教育の実践などについて紹介した。
 一方、田中教授は、「学生の意図しない反応は、主体的反応の表現。意図しない反応を除去する“PDCAサイクル”という生産モデルは教育には当てはまらないのではないか」との疑問を投げかけた。また、大学改革もそれを実現するFDもローカリティ(個別性)に根ざしており、日常の地道な取り組みに注目すべきとの持論を展開した。
 その後、休憩を挟んで会場から、学士力の向上やFD、大学間連携についての質疑応答があった。結城学長はその中で、「学士課程教育の質向上の決め手は授業の向上。研究は競争だが、FDは連携協力して学びあうことが有効。協力によってお互いにメリットがある」と述べ、同大学が主体となっているFDネットワークつばさを紹介した。同じく、関西の広域FDネットワークとして、田中教授は、関西地区FD協議会の取組などを紹介した。
 石川学長は、学生が身に付けるべき能力について、「人間力もあるが、粘り強さ、という前向きな力をどうやったら身につけさせることができるかが大きな問題だ」と付け足した。
 終了後には、会場をかえての懇親会が開かれ、全国から集った参加者が、近況の話題に花を咲かせた。
 翌日は、八つの分科会、四つのミニ・シンポジウムが行なわれた。「一単位四五時間の学習の実質化」、「学生とともに進めるFD」、「グループ学習とプロジェクト学習」、「教職協働」など最新の話題にスポットを当てたテーマが目立ち、参加者は熱心に議論に参加した。

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