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平成20年11月 第2340号(11月26日)

地域に評価される大学 GPの成果をどう考えるか
  駿河台大学

 駿河台大学は「開かれた大学・地域に密着した大学」を理念に掲げている。「学生参加による〈入間〉活性化プロジェクト(いるプロ)」を組織化し、現代GPにも採択された。
 いるプロは、大学・入間市・入間市商工会が協定を結び、さらに商店街や市民団体と共同して様々な取り組みに学生を参加させることで体験学習をさせるもの。コミュニケーション能力や社会性、現実的な職業観を涵養し、地域の重要性を認識、大学として地域の活性化に貢献している。
 いるプロの活動は、パソコンクリニック、中国語/韓国語しゃべり場、市のFM放送局とCATV局の番組制作、市立児童館にあるプラネタリウムで上映する作品の制作、地元企業が開発しつつある商品の学生によるリサーチ、企業・商店で体験実習する地域インターンシップなど。
 FM放送局の活動に参加した学生からは、「ここで学んだことは、社会に出てからも役立つと思う。テレビ・ラジオの見方、聴き方が変わった」との声も。エピソードとして、インタビューで得た情報の不正確さから、間違った説明をTV放送して、始末書を書き、お詫びに行ったり、訂正を入れたり、指導教員も含めて後始末に追われた。放送の責任の重大さを改めて認識し、誤ったことをしたときにどう対処するかなど、失敗の経験を通じてグループとして大いに学ぶことがあったようである。
 小学校のパソコン授業をサポートした学生から、「教えることもたくさんあったけど、それ以上に教えられた気がした」との感想があったように、人との関わりを通して学ぶことの大切さも実感している。
 地元商店街の専務理事からの声。「企画から参加して、色々なアイデアや学生らしい活動力で盛り上げてくれた。商店街に対する率直な意見、活性化プロジェクトに係わった先生による勉強会が効果的だったし、刺激になった」と話す一方、「予算上設けられなくなったり、スタッフが少なくなって維持管理がうまくいかない状態になったときが心配」と懸念を漏らす。
 中央公民館からは、「学生の参加は、子ども達の育成だけでなく地域の活性化にとっても意義がある」とコメントもあった。
 市の自治文化課(国際交流担当)から日本語教室保育について、「慢性的な保育担当者不足だったが、学生が数人でローテーションを組んでくれたため、不足が解消された。そのため子どもを預けて受講する方も増え、外国人市民支援の充実に繋がっている」。具体的に地域の課題の解決に繋がっていることをうかがわせる。
 「いるプロ」以前は、学生世代が地域イベントや活動の中にほとんどいなかった。いるプロによって、二〇歳前後の若者の姿が見られるようになり、世代がつながった。また、市民の大学に対する関心が高まり、公開講座の参加者が倍増し、学園祭への参加も増えた。
 更なる成果として、近隣の大学間(西武文理大学・尚美学園大学・武蔵野学院大学・東京国際大学・城西大学)での連携事業に繋がった。
 「地域の大学から地域の企業へ」というスローガンを掲げ、各大学と地域の団体とが加わった「埼玉県西部地域雇用促進協議会」を結成。「埼玉県西武地域企業合同説明会」を計画し、春秋一回ずつ実施。第五回目は、地域企業約七〇社、学生約三〇〇人が参加した。
 学生の中には、この企業合同説明会がきっかけになって、地域企業に就職した学生が十数名以上出ており、彼らがいるプロの活動に協力している。学生が社会人になった後も地域を、後輩学生を支える好循環が生まれている。

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