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平成20年10月 第2336号(10月22日)

三様監査の体制を 大学職員サポートセンターがセミナー

 大学職員サポートセンター(小日向允理事長)は、去る十月十日、都内ホテルにおいて、セミナー「大学の経営システムと監査体制の構築」を開催した。
 〇五年に私立学校法が改正され、監事の監査機能の充実が求められている。一方、〇六年度の調査では、内部監査部門を設置している私立大学は三割に留まっているのが現状だ。こうした状況から同センターでは、石渡朝男(学)和洋学園理事・評議員の司会のもと、藤田幸男早稲田大学名誉教授、田辺和秀日本私立学校振興・共済事業団私学経営情報センター経営支援室長、久米信行(学)神奈川大学前内部監査室長の講演を盛り込んだ。
 まず藤田氏が、私立大学の経営システムや監査体制について論じ、特に監事は「理事長よりも経験を持つプロであること。逆に、監事に適正な報酬を払い、責任を持って仕事をしてもらうという理事会の理解も大事だ」と指摘。監事の役割は「責任をきちんと果たせる評議員や理事が選出されているか。そのチェックが最も重要」との考えを示した。
 この経営者を牽制する仕組みをガバナンスという。司会の石渡氏も「ガバナンスで最も重要な目的は、いかに適切な経営者を選ぶかである」と述べている。
 田辺氏は、大学の経営改革について、監査の視点から論じた。
 「経営者は現状認識をして危機感を持つこと。そして、組織内部に情報公開し透明性を確保する。経営者が動かない場合は、監事が経営者に意見を言う立場にある」と監事の役割を説明。「監事は、業務監査と会計監査にメリハリをつけ、「常勤化」や「外部性の強化」を進め、公認会計士、内部監査組織との連携を図ることが課題だ」などと続けた。
 最後に久米氏は、「内部監査だけでは問題解決の力に欠ける。監事を中心に連携をしないと力が発揮できない」と三様監査の重要性に触れた。三様監査は、監事監査、監査法人(会計)監査、内部監査の三者による監査体制を指す。
 久米氏は、神奈川大学で監査体制を構築した経験から、内部監査室と監事との連携不足を解決するため、監査連絡会を発足し連携を密にしたことなどを説明。また、監査上考慮すべき検討事項と課題に、競争的資金の不正利用防止ガイドラインなど緊急を要するもの、セクハラや施設の火災など危機管理を挙げ、最後に、「役員と監事は率直な意見交換を」と締めくくった。その後、フロアからの質疑に応答し終了した。
 三講師に共通するのは、監事と経営者、事務方、あるいは監事間のコミュニケーションの活性化であった。藤田氏は、講演の最後に、「監査人とは勉強し合い高め合う関係が望ましい」と述べた。監事体制は組織内部に情報公開・情報共有の仕組みがなければ望む効果は得られないということだろう。

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