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平成20年10月 第2334号(10月8日)

法科大学院教育の質向上 改善方策の中間まとめ

 中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会は、このたび、法科大学院における教育の質の向上のための改善の方向性を、中間まとめとしてとりまとめた。同委員会は、三月よりこの度のとりまとめの審議を行ってきた。背景には、定員過欠員の状況(平成二十年は四六法科大学院・三八八名)や法科大学院修了者の一部に、基本的な知識・理解不十分法律実務基礎教育の内容のバラツキがみられる等がある。とりまとめの概要は次の通り。

 入学者の質と多様性の確保
 一、競争性の確保:一定の志願者数の確保が困難である法科大学院については、質の高い入学者を確保するため、入学定員の見直しなど、競争的な環境を整える必要があるなど。
 二、適正試験の改善:点数が著しく低い者を入学させることにならないよう、適正試験低得点者の法科大学院入学後の成績なども検証しながら、統一的な入学最低基準を設定することを検討すべきであるなど。
 三、多様な人材の確保: 多様なバックグラウンドを持つ法曹を養成する観点から、より一層社会人、他学部出身者を法科大学院に受け入れるためには、法学未修者が三年の教育課程を経れば法科大学院修了にふさわしい質と能力を備えることができるよう、カリキュラムや授業内容・方法の改善にさらに努めるべきであるなど。

 修了者の質の保証
 一、共通的な到達目標の設定と達成度評価方法:学生が修了時までに達成すべき共通の目標を設定し、修了者の一定以上の質の確保を図るなど。
 二、教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底:一年次から二年次への進級については、法律基本科目の基礎学力が備わっているかを厳格・適切に判定する必要があるなど。
 三、司法試験との関係:三回の司法試験の結果、修了者のうち、司法試験に合格し、法曹として活躍できる者の割合が著しく低い状況が継続的に見られる法科大学院については、入学定員数の調整を含めた適切な入学者選抜や教育水準の確保・向上を前提とした上での厳格な成績評価及び修了認定の徹底などを担保するための方策を講じ、現状の改善を図る必要がある。

 教育体制の充実
 一、質の高い教員の確保:平成二十五年まで認められている学部との教員数のダブルカウントの暫定措置については、延長しないこととする。認証評価機関による評価においては、該当分野の状況などを踏まえながら、教員の資質・能力・実績について、適切に評価が行われることが期待されるなど。
 二、入学定員の見直しと法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進:小規模の法科大学院や地方の法科大学院において、今後、単独では、質の高い教員が十分確保できず、充実した法律基本科目や幅広い先端・展開科目の提供が困難になるなど、教育水準の継続的・安定的な保証について懸念が生じている場合には、他の法科大学院との間で教育課程の共同実施・統合等を図ることを積極的に検討する必要があるなど。
 三、教員養成体制の構築:法科大学院生が、法科大学院修了後に後期博士課程に進学することは、経済的な負担が大きいため、授業料免除や奨学金の充実など経済的支援の充実をも図るべきである。
 四、教員の教育能力の向上:各法科大学院におけるFDを充実させるとともに、その成果を授業内容・方法の不断の改善につなげていく体制を整備する必要があるなど。

 質を重視した評価システムの構築
 一、教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価:法科大学院教育の質の保証の観点から、例えば、共通的な到達目標の達成状況、厳格な成績評価・修了認定の状況、教員の教育研究上の業績・能力、著しく低い司法試験合格割合の継続などについて、重点的に評価を行っていくことが期待されるなど。
 二、積極的な情報公開の推進:今後、実態調査などを実施しながら、各法科大学院による情報公開の現状を把握し、より一層積極的な情報提供の推進のための具体的方策について検討を継続していく。
 三、フォローアップ体制の構築:同委員会の中にフォローアップを行う組織を配置し、継続的に実態を把握しながら、必要な改善を各法科大学院に対して促していく仕組みを構築する必要があるなど。
 なお、同委員会は、今年度末までに、さらに審議を進め、改善方策をより具体化する予定。

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