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平成20年9月 第2332号(9月24日)

新刊紹介 「消える大学 残る大学」 桜美林大学教授 諸星裕著

 著者が大学院で経営管理を教えているとは知らなかった。てっきり、テレビのコメンテーターとして発言する国際、社会問題が専門と思っていた。
 それはともかく、刺激的なタイトルである。しかし、内容は、これまで指摘されてきた"非刺激的"なもので、独自の大学改革論が展開されているのが目新しい。
 タイトルの部分は第一章で、大学全入時代を〈偏差値上位の大学から順に受験生を取っていく。すると偏差値が下位に向かうどこかで受験生がいなくなって、下位大学はつぶれてしまう〉と指摘する。
 そうならないための解決策を第二章から授けている。第二章の大学のミッション、第三章のAOシステム、第五章のGPAの導入の勧めなど―著者の米国での体験をもとにしている。
 第四章で、オープンキャンパスを〈この日は、「大学を良く見せる日」なのです。そんな日に大学へ行ってはいけません〉と言い切るのはいかがなものか。
 米国の大学では、〈受験生向けの「キャンパスアドバイザー」が案内する〉が、〈日本は閉ざされている〉と書く。ここは現実を直視すべき。第六章にある早慶の比較(二〇二頁)も首を傾げた。
 全体的に、米国の高等教育の良さにページを割くが、「アメリカ至上主義ではない」と弁解。日本の大学では著者の母校のICUを評価しているが、これも「母校愛に起因するものではない」と弁解する。
 肝心なところでの弁解が気になった。弁解が多いと著書そのものが軽くなる。もっとも、「自己の思想を表現してみることは、所詮弁解にすぎない」(原口統三)の箴言もある。

「消える大学 残る大学−全入時代の生き残り戦略」
 諸星 裕著、集英社
 読者係 03-3230‐6080
 定価 1400円+税
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