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平成20年9月 第2332号(9月24日)

改革担う大学職員 大学行政管理学会の挑戦E
  東北地区研究会
  東北の若手育成目指す "名言"も生まれた活発な活動

  東北地区研究会理事 東北学院法人事務局庶務部長 日野 哲

 1. 研究会発足の背景
 東北地区研究会は、発足して四年目を迎える。二○○三年三月に開催された学会理事会は、その活動の全国的な活性化のために東日本と西日本に支部を置くことを決議し、東北地区は活動の実態がないまま、東日本支部の一地区として位置づけられた。
 その後、○四年度の事業計画の重点活動として「東北地区の加入促進と地区活動の充実」が挙げられ、翌○五年六月、記念講演に当時の原 邦夫会長(慶應義塾)を迎えて、念願の第一回研究会を開催したのである。
 当時の会員数は一七名。青森、秋田、山形、宮城、福島の東北五県に文字通り点在している状況であったが、メールによる意見も集約して、当日の話し合いで今後の活動を以下のように行うこととした。
 1. 研究会の内容:関心の高いテーマを選び、事例報告、講演会、研究発表など、多彩な形式で行う。
 2. 研究会の持ち方:年一〜二回、土曜日の午後に開催(終了後に懇親会を設ける). 当面、会員数が多い仙台を中心に開催する。事務局は当分の間、東北学院大学が担当する。
 3. 会員の活動:各大学で研究会への参加と学会への加入を呼びかける。

 2. これまでの歩み
 研究会はまだ合計四回を数えるだけであるが、いずれも関東地区のテーマ別研究会との合同で開催した。これは、学会の方針として各地区の研究会とテーマ別研究会との連携・共催を奨励していることを受けて、まず本学の会員が参加しているテーマ別研究会(人事研究、事務組織研究、財務研究)の協力を得て、合同開催としていただいたものである。各テーマ別研究会では、合同研究会(さらに懇親会)終了後、続けて独自の一〜二泊の合宿研修を実施し、東北の温泉と山海の珍味を堪能しながら、年間計画に基づくテーマについてじっくりと集中して研究活動を行っている。
 ▽第一回研究会(○五年)
 記念すべき第一回研究会には、櫛田繁輝氏(明治学院大学)をリーダーとする大学人事研究グループに協力していただいた。東北地区から二五名、人事研究グループから関東、名古屋地区の会員一五名、合計四〇名が参加。原会長による記念講演のほか、当地区からの最初の研究発表者は、「芸術・デザイン系大学の産学官連携の可能性」と題する高橋勝彦氏(東北芸術工科大学)であった。
 ▽第二回研究会(○六年)
 第二回も大学人事研究グループの協力を得て、テーマを「組織」として開催。当時は、翌年四月一日から学校教育法の一部が改正され、「助教授」を「准教授」に改称するなどの「大学等の教員組織の整備」を目前にした時期でもあり、仙台市を中心に会員以外の多くの私立大学からも参加があった。同法改正への対応については、斎藤 誠法学部教授(東北学院大学)から本学の基本方針と検討状況が報告された。喫緊の課題であっただけに、参加した多くの大学からの取り組みの状況報告も含め、有益な情報交換の機会となった。また、事務系の「組織」で大工原孝氏(日本大学)による「大学事務組織の研究」―序説・その必要性―と題する研究が発表された。大工原氏は、その後青山学院大学で開催された学会の第一〇回研究集会でも発表され、これを契機に「大学事務組織研究会」がテーマ別研究会の一つとして組織化されるに至ったのである。
 ▽戦略的マネジメント・セミナー(○七年)
 ○七年二月には、学会の事業計画に挙げられていた「戦略的マネジメント・セミナー」の東北地区での開催に協力することができた。この分野の日本における先駆的指導者である池田輝政教授(名城大学)をお迎えして、「"現場力"を」高める業務戦略プランの作成」をテーマに、二日間にわたりリラックスしながらも真剣に実践的な戦略プラニングの考え方を体験実習した。
 大学運営の機軸となる中期目標・中期計画は、海外の大学では「戦略プラン」と呼ばれる。日本の国立大学法人では、国が示した制度の枠組みと様式に沿って立案されている。
 一方、私学はそのスタンダードを意識しながらも、独自のものを作成する必要があり、プロとしての大学行政管理職員(アドミニストレーター)にはその「戦略プラニング」の手法を学ぶことが求められている。
 セミナーでは、「業務戦略プラン」という視点から、自分たちの業務の「現状分析」と他大学の良い事例との「比較分析」を行い、その上で参加者の業務経験から「総務企画」「財務会計」「学生支援」の三グループに分かれて、各業務の戦略プランについて共同作業を楽しみ、相互に批評し合った。福島一政前会長(日本福祉大学)も参加され、「財務会計」グループの業務戦略プラン作成の過程で、「学園の金庫番から羅針盤へ」(※@)という財務担当職員の目指すべき役割を示唆する名言が生まれたのである。
 ※@『大学と学生』(平成十九年七月号)「特集SD・FD」の中で福島氏が紹介
 ▽第三回・第四回研究会(○七年)
 新グループである大学事務組織研究会との合同で開催した。同年六月に同研究会が実施したアンケート調査に基づく集計結果が詳細に報告され、各大学が経営企画・戦略によって事務組織を改組・再編または新設している様子が伺えた。
 東北地区の高橋延一氏((有)キャンパス代表)からは、若者(特に高校生)を対象にした様々なイベントに直接関わる立場から、"学ぶ楽しさ・働く楽しさ"を肌で感じてもらおうという企画の紹介があったが、加えて大学初の民事再生手続きを経験された立場からの話題提供は、さらにインパクトのある内容であった。
 ○七年度第二回目となる研究会は、大学財務研究グループと合同で開催。講師には、同年の総会で第二回孫福賞を受賞された渡邊徹氏(日本大学)をお迎えしたほか、本学から財務担当常任理事の関根正行氏(※A)と学務部長・法学部教授の井上義比古氏が講演を行い、大学運営における職員の果たす役割を経営の視点から見つめ直す良い機会となった。
 ※A論旨は、『私学経営』(平成二十年八月号)「私立大学の経営と事務職員の役割」の一文に紹介。

 3. 今後の活動
 今年十月には、大学学事研究会との共催により、先月(八月)文部科学省の新規事業である「戦略的大学連携支援事業」に採択された仙台圏の国公私立一七大学等の連携取り組みに関する報告を中心に、通算第五回目となる研究会を開催する予定である。同事業には岩手と山形の各コンソーシアムの取り組みも採択されており、大学間の連携を強化・拡充する意味でも各大学で当地区会員の果たす役割がますます大きくなるものと思われる。

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