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平成20年9月 第2332号(9月24日)

留学生担当者協議会を開催 出入国管理等関係6省の留学支援策
  国際化へ向け「30万人計画」等の諸課題を協議

日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る九月十八日(木)、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において、「平成二十年度(第七回)留学生担当者協議会」を開催した。同協議会は、同協会の国際交流委員会(担当理事=森田嘉一京都外国語大学理事長・総長)が準備を進めてきたものである。協議では、「留学生三〇万人計画」を機に、国の留学生政策がどのように変わっていくのか、文部科学省と法務省の担当官が解説したほか、文化女子大学の留学生受入れの事例発表があった。また、協議終了後には、入管の管轄地ごとに分かれての情報交換会も行われた。なお、協議会には加盟校から一三九大学一七〇名余が参加した。

質の向上と国際化の進展を
 講演に移り、文科省学生支援課留学生交流室の江ア典宏室長が「留学生三〇万人計画と文科省の留学生政策」と題して、留学生数の推移、『留学生三〇万人計画』の骨子、二十一年度概算要求主要事項、関係六省の留学支援政策などについて、解説を行った。
 受入れ環境の整備として、公的宿舎入居留学生数は全体の三〇%に留まっていることから、国土交通省との協力のもと、渡日後一年以内、とりわけ渡日直後の留学生に対して、公的宿舎を確保する計画があるなど、概算要求事項に基づいた詳細な説明があった。
 同氏は最後に「二〇二〇年に留学生受入れが三〇万人になっているかということよりも、日本の各大学が現在の状況よりも格段に質の向上を果たし、国際化が進んでいることを願っている」と述べた。
 なお、フロアからの短期留学生の位置づけについての質問に、同氏は、現在、短期留学生は三か月以上一年未満の留学生しかカウントされていないが、今後は三か月未満の留学生も重視していきたいと回答した。

入国管理等の緩和と課題
 続いて、法務省入国管理局入国在留課の中山昌秋法務専門官が「出入国管理行政の現状と留学生に係る諸問題について―留学生三〇万人計画の実現に向けて―」と題して講演を行った。
 平成十二年度から現在に至るまでの在留資格認定証明書交付申請に係る審査方針について、「十二年度から実施された提出書類の簡素化により、入国目的が勉学でない者、偽造文書を行使する者などが増加、十六年度から提出書類の見直しを行うことになった。このように、留学生の入国を促すために条件を緩和すると違反者が増加する傾向にある。留学生三〇万人計画に伴う審査においても同じ現象が起きないとは限らない。問題が起きてから強化するのではなく、問題が起きる前に防ぐように管理してほしい」などと述べた。
 入国管理局では、現在、適正な入学選抜を行っている学校については、構造改革特別区域法などにより、緩和をする措置を行っている。「留学生三〇万人計画」においては、これらをより一層緩和することが考えられ、@入国時や入国後の在留期間の更新申請等に係る審査の簡素化や審査期間の短縮、A就労可能な職種の明示等在留資格の明確化や取扱いの弾力化、就職活動のための在留期間の延長などが検討されている。
 フロアからは、留学生が失踪してしまった場合、適切かつ慎重な在籍管理を行うためにも、在留しているのか帰国しているのかどうかだけでも、教えて欲しいといった意見があり、同氏は、個人情報保護法などで、情報を開示することはできないが、入管地方局と密に連絡を取り合うなどしてほしいと述べた。

事例発表
 最後に、文化女子大学の大沼 聡常任理事が「文化学園におけるグローバリゼーション推進に対する取組」と題して、国際化推進における国際的な社会背景の変化、同学園の国際的広報活動、留学生受入れ体制の強化などについての事例報告を行った。
 同学園は、五年ほど前から国際化に向けた取組みを本格的に始め、教育機関としての国際的評価、認知度の向上を図り、国際ファッション工科大学連盟加盟と年次総会の実施、海外ファッションショーの開催、海外教育機関等とのコラボレーションイベントを推進していることなどが紹介された。
 留学生受入れ態勢としては、@国際交流センターの設置、A海外事務ネットワークの確立と卒業生支援体制の構築(中国と韓国に卒業生会を組織)、B留学生宿舎の整備、C入国手続事務、留学生生活支援等のアドミッション・オフィス能力の強化を図っている。
 また、海外研修・短期留学制度の整備、日本語教育の確立、海外事務所ネットワークの確立と卒業生支援体制の構築の強化、FD・SDを図った教職員の長短期の語学・海外研修などを行っている。
 同氏は、今後の課題として、@継続的な向上を望める形には至っていない、A日本人学生の外国語教育への取り組み推進が困難であることなどを述べ、国策的な戦略の必要性を強調した。
 協議の終了後には、会場を移し情報交換会が催され、参加者約八〇名が参加し、積極的な意見交換等が行われ、全日程を終了した。

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