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平成20年9月 第2331号(9月17日)

FDセミナー開く 米専門家招きICT活用訴え

 メディア教育開発センター(清水康敬理事長)は、米国高等教育機関のICT(情報通信技術)活用を牽引するEDUCAUSEと連携して、去る八月二十六日、二十七日に、東京国際交流館において、大学経営者と実務担当者向けのICT活用教育推進リーダーシップ/FDセミナーを開催した。二十六日の幹部向けプログラムを紹介する。
 「ICT活用教育に必要なのは技術ではない、戦略である」。
 EDUCAUSEのダイアナ・オブリンガー会長は、ビデオ発表の中で「戦略」という言葉を何度も強調した。ICTは戦略を遂行する手段であり、戦略という視点から技術を考えなければならない。
 続くメインプログラム、三人の専門家によるセッションの中でも、戦略の重要性は繰り返された。達成したいことは何か。明確なゴールは描けているか。その中で重要な事項は何か。リーダーシップを発揮して、組織として取り組めるか。専門家たちは、「ICTはツールでしかない」と口を揃える。
 セッションの出演者は、ダートマスカレッジのマルコム・ブラウン教授、セントラルフロリダ大学のジョエル・ハートマン教授、ハワイ大学のデビッド・ラスナー教授。三名は、EDUCAUSEにおいても指導的な役割を果たしている。
 アメリカでは、学生獲得競争やリテンション対策において、ICTは大きなツールである。ICTによって一人ひとりの学生と密接に関わり、ニーズに応えることができる。また、場所や時間の制約をなくし、アクティブ・ラーニングや協調学習の機会を増やしている。何よりも、戦略的にITを利用すれば教育・研究コストを減らし、様々な可能性を広げることができるとしている。
 その他にも教室、事務室、図書館、研究室のネットワーク、eポートフォリオからコースの管理まで、ICTは大学改革の力となっている。
 出演者たちは、ICT活用経験等を共有する専門家相互の学び合いの場の重要性についても指摘。EDUCAUSEも、ICT活用教育の専門家集団であり、年次大会にはおよそ一万人が参加するという。また、メーリングリストやブログなど、オンラインでの情報交換も活発に行われ、成功・失敗体験が共有される。
 その後のパネルディスカッションでは、EDUCAUSEの提言を、どのように日本で具体化すべきかを、カーネギー財団の飯吉透氏、京都大学の美濃導彦教授、同センターの清水理事長を交えて議論した。
 ICT活用教育を導入するに当たり、日本の大学の経営者をどのように説得するかなどについて議論が展開。EDUCAUSE側からは、パイロットプログラムを実行して説得の材料とする、学生に関与してもらうなどのアイディアが出されたが、最も大事なのは、対話をスタートすることだ等と述べた。
 また、飯吉氏からは、堂々巡りの意見を繰り返すのではなく、「実行することだ」という強い意見が必要との声もあった。

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