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教育学術オンライン

平成20年8月 第2327号(8月20日)

"教育"から"学習"へ
  PCカンファレンス 学びとは何か探究

 コンピュータ利用教育協議会(会長:佐伯 胖青山学院大学教授)と全国大学生活協同組合連合会は、去る八月六日から八日まで、神奈川県藤沢市の慶應義塾湘南藤沢キャンパスにおいて、「2008 PCカンファレンス」を開催した。このたびのテーマは「創発する学び」。

 同協議会は、教職員がそれぞれの専門領域を越えて、コンピュータを使った教育や研究について議論し、経験を共有する場であることなどが特徴である。このたびは、学びの「関係性」について、新しい時代状況の中でどのような変化が期待されているのか、そこではどのような創発が見られるのかを論議した。
 佐伯会長は基調講演の中で、学びを支援することを目的とする「学習学」という概念を披露。学びの本質は、ヒト、モノ、コトの「関係の網目の中」で生起するもので、勉強と学びは違うことを主張した。また、能動的な学習の背景には、「共感」があるという。現代は、共感する他者がいないため、学びをつまらなくしてしまっている。他者の立場に身を置くことで他者を理解し、学習の動機付けにつなげることが重要である。今後、教師は学習者が共感的に参加できる場をつくることが望まれると述べた。
 また、熊坂賢次慶應義塾大学教授の講演では、湘南藤沢キャンパス(SFC)設立以来、「創発する学び」を誘発する場をいかにデザインするかを模索してきたことを講演した。SFCは、インターネットという情報基盤のもと、教員、職員、学生が自律分散しながら協調しつつ、社会実践的に問題解決の方法論を身に付けていくように設計されている。カリキュラムは「教養と専門」ではなく、「先端と創造」という機能関係から構成され、また、地域連携にも力を入れていることなどを紹介した。
 四つのシンポジウムの一つ、「プロジェクトを通じた学びとメディア環境」では、学生が様々なプロジェクトに参加する中で実践的な知識やスキル、新しい気付きや学びを得る「プロジェクト・ベースド・ラーニング」について議論が展開。パネラーからは、「学びをどこまで構造化するか」「省察(振り返り)のタイミングはどこか」などを熱心に議論した。
 三日間を通して、情報教育やモバイルがもたらす学習の可能性と課題、情報技術と日本語をテーマとしたシンポジウム、二〇近くの分科会とポスターセッションが開かれた。一日目夜のイブニングトーク(参加者持ち寄りの企画)や二日目夜のレセプションでは、コンピュータを利用した新しい学びの創発の在り方について活発に議論が行われ、振興を深める有意義な機会となった。

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