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平成20年7月 第2325号(7月23日)

改革担う大学職員 大学行政管理学会の挑戦C
 研究推進・支援研究会
 補助金、知財テーマに研究 最近は"不正使用防止"も

研究推進・支援研究会リーダー慶応義塾総合研究推進機構及び
  研究支援センター本部事務次長 大堀 洋

 「研究支援」「研究推進」という言葉が、大学の中で一般的になったのは、そんなに昔のことではない。
 慶應義塾では、一九九九年六月に、研究支援センターなる組織を全キャンパスに立ち上げた。それまで四年間、信濃町キャンパスの用度課で働いていた私が、何故か、その新組織の本部的な業務を行なう課長として三田キャンパスへ異動となった。当時の原 邦夫人事部長、故孫福 弘塾監局長のしかけだったのか。偶然にも、このお二人は大学行政管理学会の会長をおやりになっている。
 それから約五年が過ぎた二〇〇四年。原会長から、研究推進・支援研究会を立ち上げたいので、協力してもらえないかとの話があった。日本大学とは話がついており、日大はサブリーダーを希望。リーダーのポストしか空いていないのだけれど、との相談であった。
 かなり強引な申し出であったが、やってみたい気持ちもあり、引き受けることにした。
 引き受けた理由は、もうひとつあった。サブリーダーを引き受けられた当時の日大本部研究総合事務室の河野道隆事務課長が、とてもよい方であったことである。この方とならやっていけるのではと思い、船出したのだった。
 大学行政管理学会は、基本的に会員が手弁当で運営しており、テーマも自由に設定するなど、気楽なグループである。個人的には、この研究支援推進部門として研究会を立ち上げるまでは、他大学の取り組みを系統立てて分析したことなどなかったので、日常の仕事にも役立っている。
 研究会を進めていくにあたり、運営についていくつかのコンセプトを設けた。
 @個人では呼ぶことが出来ない講師を迎え、話を伺うとともに講演のあと(ならびに懇親会)で講師を交えた率直なる意見交換を行なうこと。
 A科研費など、多くの大学に共通したテーマを取り上げ、参加希望者が積極的に参加できる環境を整えること。
 B研究支援全般に係る大きなテーマ、補助金等に関するテーマ、知的財産に関するテーマ、に分け設定すると同時に、それが回数として偏りがないように企画していくこと。
 以上である。
 また、参加者がいつでも参加できるよう一話完結方式とした。一方、どうせやるならまじめにやろうということで、大学の事情で集まりにくい四月、八月、二月以外は毎月一回土曜日午後の開催とした。
 なお、必ず研究会の後には、懇親会を行なっている。いつも二時間で“おひらき”にする予定であるが、大体は三〇分程度オーバーする(参加者のエキサイティングなコメントが多く、いつも盛り上がる)。
 河野事務課長は飲めない方だったが、よく付き合ってくれた。残念なことに、スタートして二年の後、人事異動で藤沢キャンパスに移られると同時に研究会の運営からも退いた。
 その役を引き継いでくれたのが、同じ日大本部研究総合事務室の高橋アヅサ課長である。この方も意欲的で、研究会の活力となっている。また、高橋課長の補佐をしていただく森田芳樹課長補佐は明るい性格で、手堅い仕事ぶりは、非常に頼りにさせて頂いている。
 私の知る範囲では、私立大学連盟主催の研修で「研究支援」を取り上げているケースは少なく、その意味でも、研究会の存在価値があるという実感はある。事実、日常業務で困ったときに、気軽に聞ける場所が必要であり、そのような「場所」であり続けたいと思っている。
 わざわざ土曜の午後に参加する動機付けは、その会の内容にあると思う。幹事もメニューを用意するために時間を十分かけている。私と高橋課長では、知的財産関係のメニューを用意することが出来ないため、強力な協力者として青山学院知的資産連携機構の竹田由美子係長と工学院大学企画室の矢島治夫課長にサブリーダーとして参画してもらい会の運営も一緒に行ってもらっている。
 参加者の最近の興味は、研究費の不正使用防止に関するしくみ作りにある。昨年二月に文部科学省HPに掲載されたガイドラインに沿って整備することとその進捗の報告が義務付けられている。競争的資金につく間接経費の使用の仕方と同じくらい、各大学の具体的な取り組みとその進捗に関心が高い。文科省は、今年から整備状況の現地調査を行なっており、慶應義塾でも七月に行なわれた。
 そのときのことを少し紹介すると、文科省からの質問は細部にわたり予想よりも厳しいものであった。ガイドラインに従い仕組みづくりを行なうことは、リスク回避にもつながり、研究費運用の透明性を高めることでもあるから、計画的にスピーディーに実行するべきであることは、よく分かる。
 しかし、機関管理は、研究者との信頼関係を保ちつつ、研究者に納得できる内容、方法を提示する仕組みでなければならない。現地調査を受けた率直なる印象は、スポンサーである文科省担当者には、いまひとつそのニュアンスが理解しにくかったように思われた。
 このようなことも、研究会でのテーマの一つとして披露することになるだろう。
 四年間運営に携わり私大の現状はだいたい想定できるが、やはり国公立の実態が把握しきれていない。今後のテーマは、国公立大学とのコラボレーションではないかと思っている。
 補助金(競争的資金)を取ることも、戦略的な計画がないと負けることが多い。申請段階で、スポンサーが何を求めているかを分析し、ある意味でゲーム感覚なシナリオを書くことが必要であり、そこで我々事務系の出番が回ってくるのである。国公立のスタッフには、その意味で長けている方が多いようであり、研究会を通じて是非交流したいと考えている。
 先ほどの研究費の不正防止の取り組みについても、研究のプログラムマネジメントに、研究支援部門の職員がどのように関与しているかで、浸透の仕方が違ってくる。これは、研究者とのコミュニケーションのあり方であり、信頼関係を培っているかどうかである
。  研究支援部門は、あくまでも事務部門であるため研究者側に立つことはありえないが、協働作業をしていく立場にはあると思う。
 今後は、若い会員に対して積極的に呼びかけて人材育成を行なうとともに、研究支援としての業務モデルを作成していきたい。当研究会に、多くの方の参加を切に希望する。

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