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平成20年7月 第2323号(7月9日)

教育振興基本計画

 第4章 施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項

(1) 関係者の役割分担、連携協力

 @ 計画の実施に当たり国の果たすべき役割
 教育振興基本計画を実効あるものとするため、政府は、重点的に取り組むべき事項をはじめとして計画に掲げられた施策を推進するに当たり、関係府省間の緊密な連携を図り、その成果を見極めながら、効率的・効果的に実施する必要がある。このため、教育行政と、児童福祉や職業能力開発などの関係分野の行政との連携・協力の推進に努める必要がある。
 また、教育は、多くの関係者の取組により社会全体で担われるものであり、本計画に基づき国が施策を推進するに当たっては、地方公共団体や、教育関係事業者、NPO等の民間団体など各分野において多様な主体によって行われている様々な活動にも十分に目を配り、それらとの適切な連携を図るとともに、相互の活動がより効率的・効果的に推進されるよう配慮することが必要である。
 A 地方公共団体に期待される役割
 教育の振興に関し、地方公共団体には、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地方公共団体の経済的・社会的条件等に応じた施策を策定し、実施することにより、住民の期待に応え、その責任を全うすることが求められる。
 その際、地方公共団体の中でも、市町村と都道府県が担うべき役割はそれぞれ異なることに留意する必要がある。市町村は、最も住民に身近な立場で、その意思を十分に把握し、また、関係者との連携を図りながら、行政を行うことが求められる。具体的には、義務教育を行うのに必要な小中学校を設置し、教育活動を実施する責任を有する。あわせて、市町村立の高等学校、大学等、図書館、博物館、公民館、体育館等の設置管理、教育・文化・スポーツ等に関する各種事業の実施等を担うことが求められる。一方、都道府県は、広域的な処理を必要とする教育事業の実施及び高等学校、大学等の設置管理、市町村に対する教育条件整備のための支援、市町村における教育事業の適正な実施のための指導、助言、援助等を担う。今後、地方分権が進めば進むほど、それぞれが自律的にその責任を果たされなければならない。
 改正教育基本法には、地方公共団体においても、国の教育振興基本計画を参酌しながら、その実情に応じて、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画の策定に努める旨の規定が盛り込まれた。これまでも、多くの地方公共団体において教育に関する計画が策定されるなど、教育の振興のための施策が進められているところであるが、今後、各地方公共団体においては、国の教育振興基本計画を参考にしつつ、自らの地方公共団体における教育の総合的な振興を図っていくために、具体的にどのような対応が必要であり、そのためにはどのような計画を策定すべきかについて、地域の実情に照らしながら、主体的に判断し、より一層積極的な取組を進めることが期待される。
 今後、地方分権が更に進むことが見込まれる中で、これからの時代の地域を支え、興すのは、その地域の人々の総合的な力であり、地域づくりの基本となるのは「人づくり」である。それぞれの地域ごとに置かれている条件や抱える課題は様々であり、地方公共団体においては、教育を何よりも大切にするとの立場から、その地域ならではの充実した教育の実現に向けた取組が期待される。

(2) 教育に対する財政措置とその重点的・効率的な運用

 教育は我が国社会の存立基盤ともいうべきものであり、憲法第二十六条に定める教育の機会均等の観点からも、教育は円滑かつ継続的に実施されなければならない。このような観点から、改正教育基本法第十六条第四項には、国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない旨規定されている。我が国の教育の振興を図っていくためには、国と地方公共団体が、それぞれの役割を踏まえ所要の財政上の措置を講じていく必要がある。
 現在の国の財政状況は大変厳しい状況にあり、これまでの歳出改革等の改革努力を継続する必要がある。その際、限られた予算を最大限有効に活用する観点から、施策の選択と集中的実施を行うとともに、コスト縮減に取り組み、効果的な施策の実施を図る。新たな施策を講じるに当たっては既存施策の廃止・見直しを徹底することが必要である。
 あわせて、我が国の教育に対する公財政支出は、全体の七割以上を地方が占める構造となっており、我が国の教育の振興に当たっては地方公共団体の取組が不可欠である。各地方公共団体においても、国と同様に大変厳しい財政状況の下ではあるが、自らの責任の自覚に基づき、それぞれの実情を踏まえつつ、創意工夫を凝らしながら、当該地域における教育の振興に取り組まれるよう、強く期待したい。
 さらに、企業や個人等からの寄附金、共同研究費等民間からの資金の活用について、各教育機関の自助努力を後押しするための税制上の措置の活用を含む環境整備等を進める必要がある。

(3) 的確な情報の収集・発信と国民の意見等の把握・反映

 教育振興基本計画の推進に当たっては、施策の立案や実施におけるプロセスの透明性を確保するとともに、幅広い国民の参画を得て施策を推進することが重要である。このため、教育に関する施策に関し、迅速かつ的確な情報の収集・発信に努めるとともに、公聴の機会の充実等により、国民の意見等の把握・反映に努める必要がある。

(4) 新たに検討が必要となる事項への対応

 政府は、今後五年間、第3章に掲げた施策等の着実な実施を中心に教育の振興に取り組む必要がある。一方で、急速に変化する社会の中で、教育が対応すべき課題も日々刻々と変化している。こうした状況に対応するためには、今後の計画期間においても、必要に応じ、適時適切に新しい課題に対する検討を進めるとともに、迅速な対応を行っていく必要がある。

(5) 進捗状況の点検及び計画の見直し

 教育振興基本計画を効果的かつ着実に実施するためには、事業量指標ではなく、成果指標による定期的な点検とその結果のフィードバックが不可欠である。このため、関係府省は、毎年度、自らの施策の進捗状況について、点検を行う必要がある。その場合、十分な成果を上げることのできない施策については廃止するなどの対応も必要である。
 また、計画の年度ごとの成果の進捗状況等については、広く国民に情報提供する必要がある。
 今回の教育振興基本計画は、政府が五年間に取り組むべき具体的方策について示すものであることから、策定から五年後を目途に見直しを行い、次期計画を策定する必要がある。なお、特段の事由がある場合には、計画期間の途中に見直しを行い、その一部を改訂することもあり得るものである。

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