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平成20年7月 第2322号(7月2日)

地域共創 ―地域の中の大学めざして―<上>
  6分野で地域貢献 中長期計画で具現化目指す
   北海道医療大学 飛岡範至氏

 社会への貢献・共創は大学の生き残りのキーワードとなっている。七四年に医療系総合大学をめざして設立された北海道医療大学(松田一郎学長、北海道石狩郡当別町)も地域共創、地域の中の大学を目指して活発な活動を行っている。同大学の社会への貢献・共創の取り組みの実態、学生への教育効果等を三回にわたって取り上げる。寄稿は同大学学務部、飛岡範至氏。
 北海道医療大学は、一九七四年に医療系総合大学をめざして、「知育」「徳育」「体育」を建学の理念として設立された。当初は薬学部が、七八年には歯学部、九三年には看護福祉学部、二〇〇二年には心理科学部が設置され、現在は四学部・大学院からなる。教育理念は、@生命の尊重と個人の尊厳、A保健・医療・福祉の連携と統合、B人間性豊かな専門職業人の育成、C社会の福祉への貢献。教育目標は、@幅広く深い教養と豊かな人間性の涵養、A確かな専門知識および技術の修得、B自主性・創造性および協調性の確立、C地域社会ならびに国際社会への貢献である。
  九九年には、「本学に対する社会の要請と期待に応えるため、社会と共生・協働する自由で開かれた大学を志向し、常に組織としての自律性・透明性を高めながら、構成員一人ひとりが自主性・創造性を発揮することにより「学生中心の教育」並びに「患者中心の医療」を推進しつつ、「二十一世紀の新しい健康科学の構築」を追究する」ことを行動指針として定めた。
  1.ミッションの適合性
  最近、多くの大学が地域との関係を重視している。本学では教育理念・目標、行動指針の中にある、「地域」、「社会」、「貢献」、「共生・協働」という言葉自体が将来、保健・医療・福祉に従事することをめざす大多数の学生、また、教職員には当たり前のように捉えられてきたと考える。行動指針の方向性を中長期計画である「21計画(九一年〜九七年)」、また、21計画を継承した「〇八行動計画(通称:〇八計画/九八年〜〇八年)」の中で、具体的行動目標として謳い、地域・社会への貢献の実現に向けて取り組んできた。
  本学は前述のとおり、ミッションで明確に規定され、実績、社会的評価からも適合性を有していると考える。
  2.地域貢献の活動例
  キャンパスは、札幌あいの里キャンパス(心理科学部)と当別キャンパス(心理科学部を除く三学部)の二箇所に所在しているが、それぞれの特長を生かして活動している。地域への貢献・共創の観点から、活動例を分類すると次のとおり。
  I 地域交流・振興―環境保全活動、学生委員会と地域交流、サテライトクリニック、災害医療等貢献、当別町青少年活動センターゆうゆう24(ボランティアセンター)、当別町連携学生参加企画、NPO法人等連携、心理臨床発達支援センター、歯の健康プラザ
  II 大学施設の開放―薬草園を見る会等、あいあい祭等、図書館地域開放、二〇周年記念会館地域開放、オープンカレッジ、サテライトキャンパス
  III 産学官連携―大学前JR駅設置貢献、知的財産活用支援、コミュニティバス運行参加
  IV 大学間等交流―国際交流八大学連携、私立歯科大学四大学交流、札幌医科大学等と連携
  V 生涯学習支援―生涯学習(NICE)、サテライトキャンパス設置、認定看護師センター、薬剤師支援センター、社会人学び直し(音楽療法)
  VI 高大連携―高大連携
  3.中長期計画と地域連携
  地域貢献活動の進展には、ミッション及び中長期計画(〇八計画)を具現化する一定規模のマンパワー(学生数、多様な教員組織、教職員数)と経営基盤の安定化、大学の熱意、そして共生・協働する地域の人々や機関の支援、信頼関係がその成否を左右すると考える。
  (1)中長期計画(〇八計画)で進展
  地域・社会連携活動の〇七年度までの実績(三〇項目)を分析すると、項目の七〇%(二一項目)が九〇年代から〇七年にかけてのものであることから、中長期計画による具体的行動目標の設定が活動の進展を促したといえる。特に、〇八計画の実績では、一年間を残し四七%(一四項目)と高い実施率となった。
  (2)地方自治体との連携
  一五項目(五〇%)が、市町村との連携によるもので、公的機関、職能団体、臨地実習機関など、本学が地域の関係機関及び地域住民に支えられ、ミッションが具現化されていることがうかがえる。
  (3)地元当別町との連携
  当別町との連携による活動は七項目で、全体の二三%を占めており、人口二万人規模の自治体としては高い数値であろう。その背景には、当別キャンパスの学生・教職員約三〇〇〇人のうち、九〇〇人弱の学生が住民として居住し、まちづくりの一翼を担っていることが考えられる。特に、〇二年から〇六年までの五年の間にスタートした活動実績として、「当別町青少年活動センターゆうゆう24」(ボランティアセンター)、「当別町連携学生参加企画」、「歯の健康プラザ」、「コミュニティバス運行参加」の四項目(五七%)。
  さらには、商店街の空き店舗を利用した活動、農家ステイ、北海道医療大学の森づくり事業などの活動は、当別町長をはじめとする行政、商工会、農業協働組合など、多種多様な機関、地域の人々の熱意、支援によって実現したものである。
  地方自治体の財政、私大を取り巻く厳しい経営環境など共通する背景の中で、地域・社会貢献を考える上で、連携によって限られた経営資源を有効活用することで、地域も大学も活性化するという点で考えが一致していることが必要となる。
  なお、「当別町青少年活動センターゆうゆう24」、「歯の健康プラザ」は、それぞれ文部科学省の特色GP(〇三年度)、現代GP(〇四年度)に採択され、現在も活動を続けている。

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