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平成20年6月 第2321号(6月25日)

研究費不正防止計画83%が未策定 研究費管理の負担軽減策も

 1面に既報のとおり、文部科学省は六月十一日、平成二十年度科学研究費補助金に関する説明会を開催した。科学技術・学術政策局調査調整課競争的資金調整室の佐々木邦彦室長補佐は、「管理・監査のガイドラインに基づく体制整備の実施状況」を説明した。概要は次の通り。

 科研費の私的流用等を防止する基準等を定めた「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」に基づき、約一六〇〇機関が研究費の管理体制の実施状況を文部科学省に報告したのが昨年十一月。
 同省の調査調整課競争的資金調整室がその分析を行い、去る五月末に結果を報告した。
 それによると、八九%の機関において、責任体制を明確にし、事務処理手続きに関する相談窓口を設置していた。
 一方、約六七%の機関で不正防止計画推進部署を設置しているが、八三%の機関で不正防止計画の策定が出来ていなかった。
 また、約五七%の機関が、不正な取引に関与した業者への処分方針を決定している。約七八%の研究機関で通報(告発)の受付窓口を設置。約五〇%の研究機関で内部監査体制を整備したと回答した。
 講演の中で佐々木室長補佐は、「ガイドライン制定から一年足らずに整備された。しかし、その状況をわかりやすく情報発信している事例は少なく、モニタリングに対する意識も必ずしも高くない」と全体的な傾向について分析した。
 今後の取組については、 「研究者と事務職員のコミュニケーション、組織として取り組む意識の喚起が重要であり、最高管理責任者のリーダーシップが期待される。採用した取組の効果を評価し、改善を図るPDCAサイクルの構築も重要である。
 経費管理のIT化は研究費使用の迅速性、透明性、牽制効果など不正防止に貢献する。
 機関の管理・監査体制は、わかりやすく機関内外に情報発信を行うべきである。」
 などと提言した。
 佐々木室長補佐は、今後のガイドラインの運用についても言及した。
 米国では大学と資金配分機関が協力して「連邦デモンストレーション・パートナーシップ(FDP)」という枠組みを構築している。これは、適切な管理を行う研究機関に一定の裁量権を与え、研究資金の取扱い手続きの簡素化を図るなど、研究費の管理負担を軽減するもの。資金の提供側と受け手側が一堂に会して意見交換を行い、そのルールを改善していく。
 日本においては、去る三月に第一回の「研究資金のルールの統一化打ち合わせ(その後「研究費の効果的活用に向けた勉強会」に改称)」が行われた。日本版のFDPである。関係者が集い研究費の使いやすさの改善に向けた意見を交換した。
 ガイドラインで各機関に実施を要請しているのは、@機関内の責任体制の明確化、A適正な運営・管理の基盤となる環境の整備、B不正を発生させる要因の把握と不正防止計画の策定・実施、C研究費の適正な運営・管理活動、D情報の伝達を確保する体制の確立、Eモニタリング体制の整備の六項目である。
 今後は、ガイドラインの趣旨の趣旨徹底を行うため、説明会や研修会の開催、現地調査などを行う。ガイドラインに基づく体制整備等の実施状況の確認も今秋に予定している。

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