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平成20年6月 第2319号 (6月11日)

教育効果どう測る 全国大学生調査を報告

 東京大学教育学部大学経営・政策研究センターとIDE大学協会は、去る六月二日、東京・本郷の同大学において、大学教育改革セミナー「教育効果アセスメントと持続的な大学改革」を開催、関係者が多数集まり会場は満席となった。
 高等教育のユニバーサル化の進展、グローバル化、若者の価値観・学習意欲の変化を背景として、国際的に大学教育の質的転換が課題になっている。これを受けて大学は、教育の過程・結果を具体的に把握し、それを教育の変化に結びつけなければならないが、学習成果をどのように測るか、その説明責任をどのように果たすかに関係者は頭を悩ませている。
 セミナーではまず、米国の教育効果アセスメントについて、ヴィクター・ボーデン・インディアナ大学副学長補佐が解説した。米国では、入学時点と卒業時点の学生の変化に注目するテスト等、様々な角度から質を評価する手法が編み出されているが、どのように数量化するか、指標が作れるのかは絶えず試行錯誤が行われている。
 一方、政府からは、大学を比較する簡易な方法やテストによるアセスメントを行い、明瞭・簡潔なアカウンタビリティを行うことを求められている。
 こうした「(簡潔には説明できない)アセスメント」と「(簡潔な説明を求める)アカウンタビリティ」のジレンマの解決法として、ボーデン氏はIR(大学の機関調査研究部門)の役割を挙げ、その特徴などを解説した。
 続いて、日本の教育効果アセスメントについて、中教審の学士課程教育改革を絡めながら鈴木敏之文部科学省高等教育局高等教育政策室長が解説。日本でもアセスメント手法が議論になっており、「学士力」を測る卒業認定試験の導入などが提案されている。こうした質保証の議論は政府レベルが中心であり、今後、OECDの学習成果の評価に関する調査、日本学術会議に審査依頼等を通して本格的に審議するとした。
 続いて、金子元久東京大学大学院教授が、学生の「教授・学習過程」の評価があまり注目されていないことから、主に学生の学習行動等に焦点を当てた大規模調査「全国大学生調査」を行ったことなどを発表。具体的な調査内容について、島 一則広島大学准教授、両角亜希子東京大学大学院講師から説明があった。
 約五万人に学生アンケート調査を行った結果と分析の一部を紹介し、高校時代の「学び習慣」が大学生の学習時間に一貫して影響を与えており、こうした志向性の学生が他学生の学習参加にも影響を与える。教育プログラムだけではなく、学生同士の相互効果も大学が提供できる重要な教育環境と言えるなどとまとめた。
 質疑応答では、米国と日本の学生の意欲や能力の違い等が議論され終了した。

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