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平成20年5月 第2317号 (5月28日)

第585回理事会 次第関係予算・税制改正要望を協議
  教育振興基本計画に数値目標明記が重要
  "骨太の方針"に関わる諸会議の審議動向注視

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る五月二十三日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において、第五八五回理事会を開き、平成二十一年度私立大学関係政府予算要求の基本方針並びに私学関係税制改善実現の推進対策のほか、予算編成の骨格を成す“骨太の方針”に関わる経済財政諮問会議や教育再生懇談会等のほか、教育振興基本計画を中心とする中央教育審議会の審議動向と大学改革問題などへの対応を協議した。また、報告事項では中・四国支部、九州支部の各支部総会等が報告された。

 開会に当たり大沼会長は「教育の在り方について、それぞれの立場からいろいろな意見が出されている。教育振興基本計画や学士課程教育など、毎日のようにマスコミで報道されている。我々は、理事の皆さんのご意見に基づいて適切に対応していかなければならない。広い角度からの様々なご意見をいただきたい」と挨拶した。
 次に、新任理事の永田淑子藤女子大学理事長と川添堯彬大阪歯科大学理事長・学長の二人が紹介されて挨拶し、暖かい拍手で歓迎された。
 協議事項に入り、はじめに「平成二十一年度私立大学関係政府予算要求の基本方針並びに私学関係税制改善の推進対策等」については、小出秀文事務局長が経過報告と基本的な方針を提案した。
 要望の基本的な考え方は、同協会として四月の理事会以後、要望の視点等を協議した上で、去る五月十二日開催の日本私立大学団体連合会の公財政改革委員会(白井克彦委員長)で協議された内容を説明した。
 要望の趣旨は、中教審答申「教育振興基本計画について」を踏まえ、わが国の大学が教育研究の水準の維持・向上を図り、国際的な競争に伍していくため、高等教育に対する公的投資の国際水準(GDP比一%)への拡充が緊急の課題であるとした上で、国立大学が担うべき役割、教育費における国費負担のあるべき姿、教育の「質の保証」体制の確立、地域の振興・活性化と教育力の飛躍的向上に向けた私学助成などを挙げている。
 また、重点的要望事項としては、@適正な競争環境の実現に向けた私学助成の大幅な拡充、A国公私立大学を通じた大学教育改革の支援の拡充、B教育費負担軽減のための奨学金事業の拡充、C国際教育・連携と国家戦略としての留学生政策の推進、D認証評価機関の基盤整備等に対する支援、E環境問題への取組み等に対する支援の拡充などを提案した。
 このことと並行して、現在「教育振興基本計画」の閣議決定へ向けての動向の中で、文科省案の“教育投資を対GDP比三・五%から五%へ”との数値目標の明記が、今後の予算要望等にも大きな意義のあることから、文科省の取組を支援していく。さらに六月に定められる経済財政諮問会議の“骨太の方針”立案に対しても数値目標をテコに働きかけたいなどと述べた。
 これら多岐にわたる提案説明に対し、理事からは、「現在の高等教育への公財政支出が〇・五%で済んでいるのは、七五%の学生を担っている私学が自ら賄っているからだ」「〇・五%の公財政支出を国公私にどのように配分されているのか、また、一・〇%にした場合にはどんな配分になるのか、分析が必要ではないのか」「国大の代表者等と文科省も含めて、それぞれの役割等について話し合ってはどうか」「競争的資金について、国立と私立に同一テーマで公募したら、基盤の違いから、圧倒的に国大が有利になってしまう」「国大の大学重点化として、旧帝大などは大学院だけで、世界に伍していける高度の研究をすればよいのではないか」「経常費補助金の特別補助はプロジェクト補助であり、競争的資金とも言える意味あいがある。経常費に占める割合も過半を占めるようなことになると問題はないか」などのほか、授業料格差等、多様な意見が出された。
 今後、これらの意見等も踏まえて私大団連での意見取りまとめに臨む。
 なお、税制改正要望については、「企業等から学校法人に対する寄附」に関連して、@企業等からの寄附金にかかる税額控除制度の創設、A企業等から受配者指定寄附金にかかる手続きの大幅な簡素化など、学校法人に対する寄附促進のための措置の拡大のほか、教育費にかかる経済的負担軽減のための措置の創設、現行特例措置の維持・拡充、消費税に対する優遇措置(一部を教育目的に使用するなど)など、実態の数値等を出すなどして要望していくことにしている。
 次に、「中央教育審議会等の審議動向と大学改革問題等への対応」についてはまず、経済財政諮問会議での「高度人材受入れ拡大に向けて」や「教育の大胆な国際化を〜『留学生三〇万人計画』の実現に向けて〜」などの議論のほか、中教審の「『留学生三〇万人計画』の骨子」とりまとめの考え方に基づく具体的方策の検討が行われており、その実現に向けた私大への協力要請等もあることなどが小出事務局長から説明され、理事からは「留学生受入れについては、当初“三〇%の授業料減免措置”が導入されたものの、その方針がブレてしまった」「受入れに当っては、住居の問題、授業料減免措置など明確な方針が必要」「国費留学生が私学へ来ない」など過去の問題点等について意見が出され、今後、適宜意見具申していくことになった。
 引き続き、中教審大学分科会の「大学教育の質保証に関する審議体制」についてでは、「教育振興基本計画」の答申に基づく、各分野の質保証の枠組みづくりの課題、さらに、学士課程教育に関する審議まとめにおける“分野別評価の実施”に向けた各分野の到達目標の設定、コア・カリキュラムやモデル教材の開発を提言していること、それを受けて文科省が日本学術会議に対し、「分野別質保証の在り方」について審議依頼も行っている。その上で、分野別の評価団体の形成、評価活動を普及させるため、新たに大学分科会の下に認証評価特別委員会を設置している。そのほか、教育再生懇談会の審議内容等についても解説された。
 これら諸会議等の動向を注視していくことが提案され、了承された。
 報告事項では、同協会の中・四国支部総会(五月十三日、広島市)、九州支部総会〈2面参照〉(五月二十日、北九州市)のほか、(財)私立大学退職金財団理事、評議員の補任、中教審大学分科会制度・教育部会「学士課程教育の構築に向けて(審議まとめ)」に関する私大団連の意見発表についてなどが報告されて閉会となった。

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