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平成20年5月 第2316号 (5月21日)

科学技術外交でリーダーシップ 総合科学技術会議がまとめる

 去る五月十九日に開催された総合科学技術会議において、報告書「科学技術外交の強化に向けて」が決定された。科学技術と外交を連携し、相互に発展させる「科学技術外交」を進めていく上での基本的方針や具体的な課題・取組例等を挙げ、科学技術や外交に関わる人々に対して科学技術外交の強化の必要性を指摘している。科学技術外交を推進するための基本的方針と具体的かつ戦略的な推進は次の通り。

 《基本的方針》
 我が国の科学技術外交を推進するための基本的方針として、次の施策が実施されるべきである。
 一、我が国と相手国が相互に受益するシステムを構築する
 長期的かつ継続的に相互に協力し合っていくために、我が国と協力の相手国が相互に受益するシステムを構築していく。
 そのため、相手国が自ら問題を解決力を向上させ、自立を促進するとともに、相手国が抱える課題を共同で抽出し、その課題の解決に協力をしていく。
 二、人類が抱える地球規模の課題の解決に向け、科学技術と外交の相乗効果を発揮させる
 我が国の優れた研究成果を世界に発信することを視野に入れ、我が国の競争力の源泉となり得る科学技術と外交を連携し、相応効果を発揮させ、相互に発展させることを目指す。国境のないオープンな立場に立ち、我が国の科学技術を世界に打ち出し、人類社会に活用、貢献していくことに主眼を置き、人類が抱える地球規模の課題解決に率先して取り組む。
 三、科学技術外交を支える「人」づくりに取り組む
 科学技術の基盤も、外交の主体も、「人」である。ハードとソフトの最適な組合わせにより、科学技術外交を強化するため、科学技術外交を支える「人」の育成に取り組むとともに、その「人」の国際的な交流やネットワーク作りを促進する。また、国際的な合意形成や枠組み作り等に対する我が国の主導性を担う外交人材を強化する。
 四、国際的な存在感(プレゼンス)を強化する
 我が国の優れた科学技術に対する国際的なブランドイメージを確立するとともに、我が国が各国にとって信頼されるパートナーとなるよう、国際的な存在感(プレゼンス)を高める。そのため、例えば、首脳や閣僚による科学技術に関する政策対話を充実する。

 《具体的な推進策》
 科学技術外交に関係する取組は、政府の取組のみならず、企業、大学、個人各々の科学技術や外国に関する活動の中に極めて多くある。例えば、科学技術に関するあらゆる活動は、科学技術の水準や、我が国の国際競争力を高めることになる。その結果、我が国の科学技術が、民間の市場等を通じ、環境・エネルギー、防災、高等教育、IT、保健・感染症等の課題への取組において利用されている。
 このため、我が国の個人や企業から大学等の研究者、政府や政府機関の関係者の個々が、日々の国際的な交流や協力活動の中で、個々の事業や活動を実施していくべきである。また、同時に国として相手国との科学技術の協力がどのように行われているか、その全体の姿を把握しておくことが戦略的科学技術外交の展開に欠かせない。
 科学技術外交の推進に当たっては、上述の四つの基本的方針を組合わせながら行うことが重要であり、従来ややもすれば受動的でリーダーシップを発揮しきれていなかったことの反省の上に立って、次の三点を重点に積極的に発言し行動する科学技術外交に転換すべきである。
 一、地球規模の課題解決に向けた開発途上国との科学技術協力の強化
 @科学技術協力の実施及び成果の提供・実証
 地球温暖化、感染症、水・食料、災害等の地球規模の課題について、当該国の社会的ニーズに応じて、開発途上国との科学技術協力を実施する。また、省エネ・環境技術等の我が国の優れた科学技術の成果を積極的に開発途上国へ提供するとともに、それらを世界の適地で実証する。
 ▽アフリカとの共同研究プログラム(外務省、文部科学省)、▽新興・再興感染症研究拠点形成(文部科学省)等
 A開発途上国における人材開発
 我が国が主導して、開発途上国の研究ポテンシャルも活用しつつ、ODA等を活用した共同研究の拡充等により、開発途上国の人材育成とその課題対処能力の向上を図る。
 ▽アジア・アフリカの高等教育機関のネットワーク形成支援(外務省、文部科学省)、▽環境リーダー育成プロジェクト(内閣府、文部科学省、環境省等)等
 二、我が国の先端的な科学技術を活用した科学技術協力の強化
 @国際共同研究等の主導的な実施
 世界的な課題の解決に資する研究開発の推進、政府や研究機関による多国間の共同研究の推進に向けた新たな枠組み作り等を、国際協調の下、我が国が主導して実施する。
 ▽環境エネルギー技術革新計画の策定・実施(内閣府、文部科学省、経済産業省等)、▽地球シミュレータによる気候変動予測データの提供(文部科学省)
 A先端的研究インフラの整備及び共同利用
 先端的研究施設を使った国際共同研究を進めるとともに、気候変動予測や防災等に資する国際的な観測システムの整備を進めるため、先端的研究施設の積極的な海外開放や相互利用の促進、ネットワーク化、研究者の受入れ・派遣、共同研究の実施等を実施する。
 ▽先端研究施設の国際共用の推進(文部科学省)、▽全球地球観測システムの構築(文部科学省等)等
 三、科学技術外交を推進する基盤の強化
 開発途上国を始めとする現地での我が国研究者や事業者等の活動を強化するとともに、国際的な合意形成や枠組み作り等に対する我が国の主導性を担う外交人材を強化するため、世界的な課題への対応等を検討する国際機関において主導的役割を担う。また、NGOや民間団体が有する優れたノウハウ等を官民が連携して活用するとともに、開発途上国における民間企業の活動を支援するための環境作りに取り組む。
 ▽国際研究者ネットワークの強化及び若手国際研究者の育成(文部科学省)、▽我が国の科学技術情報の充実・提供(内閣府、外務省、文部科学省等)等

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