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平成20年5月 第2315号 (5月14日)

ホタテ貝殻で製品開発 知財成功事例として発表も

 ホタテ貝は東北、北海道地域で産出され、これに伴い年間約二一万トンのホタテ貝殻が排出され、廃棄物処理の問題が生じている。
 一九九九年から、八戸工業大学の研究グループと(株)チャフローズコーポレーションは産学共同研究をスタートさせた。大学では、ホタテ貝殻の有する機能性を科学的に明らかにし、また、試作品の機能評価等を行い、企業は機能を応用した製品実用化のための技術開発を行うこととした。
 ホタテ貝殻を粉砕し、特種な方法で焼成すると多機能な材料に変身する。強力な抗菌・消臭機能、有害な化学物質軽減・分解機能、防虫機能などである。
 シックハウス症候群対策に有効な壁材・塗料、抗菌効果の即効性を応用して、野菜、卵、台所用品等を洗浄する自然素材の除菌・消臭剤、靴のいやな臭いの消臭と靴の水虫菌の除菌も可能な靴の除菌・消臭剤、市販品の約五〇倍のカルシウムを含む発芽玄米等を開発した。二〇〇五年十月、米国治験審査会IRBから市販薬の承認を受け、水虫薬を製品化し、二〇〇六年、米国、カナダ等で販売を開始した。治験患者の七〇%が三週間以内で症状が改善した。ホタテ貝殻焼成粉末を蒸留水に混合しただけの水溶液で化学物質は一切使用していない。木質繊維パルプ複合不織布は不織布の間に焼成粉末をサンドイッチ状に含有させたもので、インソール、スリッパ、シーツ、壁紙などに応用している。再生古紙に焼成粉末を添加し、防虫シート等の必要のない畳芯も開発した。産学共同研究開始以来、多くの製品を開発し、二〇数件の国内特許と十数件の国際特許を申請することができた。
 二〇〇五年三月に内閣府総合科学技術会議、第二三回知的財産戦略専門調査会から、調査を行った全国各研究機関等のうち、成功事例として二機関の一つとして招聘され、知的財産に関する研究成果等の説明を行った。緑膿菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、虫歯菌、歯周病菌に対する抗菌効果を応用した製品を現在開発中である。未発表の機能を含め、ホタテ貝殻は人造の材料では考えられないほど多様性のある多くの機能を有することが判明した。これらは生体材料の特徴と思われる。水虫薬の場合、商品価格に換算すると貝殻一トン当たり数億円になると推定しており、一般のリサイクル品におけるコストの問題を解決し、廃棄物の資源化と高性能化が可能になった。
 既存品に焼成粉末を付加する技術を開発すれば、多機能な付加価値の高い製品にすることが可能である。
 (工学部生物環境化学工学科小山信次教授)

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