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平成20年3月 第2308号 (3月12日)

"学生視点"で教育改革
  FDフォーラムに1000人余の参加

(財)大学コンソーシアム京都は、三月八日、九日に、京都市の立命館大学衣笠キャンパスにおいて、第一三回FDフォーラムを開催した。四月からのFD義務化を控え、「大学教育と社会」をテーマに、全国から一〇〇〇名を超える参加者が集い、九つの分科会、三つのミニ・シンポジウムで盛り上がった。

 一八歳人口の減少、グローバル化などを背景に、大学を取り巻く状況が変化するとともに、社会からの大学に対する期待も高まっている。特に、学士力や社会人基礎力といった学生の能力が注目され、OECD等世界レベルでも高等教育の「質」について議論され、大学が具体的にどのような人材を送り出すのかの説明責任が求められている。こうした期待に応えるには、「教員がどのように教えるのか」から、「学生が何を学ぶのか」という、学生視点に立った教育活動に変革しなければならない。FDの義務化はこうした背景も絡みながら施行される。
 まず、川口清史立命館大学学長が会場校挨拶をしたのち、運営責任者挨拶として同フォーラム企画検討委員会委員長の木野 茂立命館大学教授、このたびのテーマを解説、また、「大学教育と社会―FD義務化を控えて―」をテーマに講演予定であった、寺棟ケ男立教大学教授が高熱のため急遽欠席、その後に予定していたパネルディスカッションを延長することを伝えた。
 パネルディスカッションは、シンポジストに中村 正(学)立命館常務理事、飯吉弘子大阪市立大学准教授、滝 紀子河合塾教育研究開発本部教育研究部長が、コーディネーターを河原地英武京都産業大学教授が務めた。ディスカッションは、シンポジストからの発表と意見交換の後、会場との議論となった。
 まず、中村常務理事が、同大学の「学びのコミュニティ」の実践について発表した。教える側の目線ではなく、「学生が○○をできるようにする」という学生の目線で教育の改革を行い、学生は具体的にどこでどのように知識を獲得しているかを明らかにしながら、あらゆる学びの支援を行う「学びのコミュニティ」を確立している。最後に、「FDは楽しいもの。知的興奮を感じるかが大事である。FDやSDを超えたプロフェッショナル・ディベロップメントの育成が目標」等と語った。
 次に、飯吉准教授から「学生・大学に求められるものと大学教授職の使命―FDの本質と今後の可能性」と題して発表があった。飯吉准教授は、産業界が学生に求める力について、様々な資料をまとめた。「産業界の大学への要求」と「大学が育成しようとしてきたもの」が、近年一致してきており、知識を与えるよりも、思考や問題発見・解決の多様な方法・プロセスを教えるように重点が移行している。その中でFDは、個人の意識改革と動機付けを推進する大学システムの構築が重要であるとした。
 最後に、滝教育研究部長から、「高校教員と学生の視点から」と題して講演を行った。河合塾独自のアンケート結果より、志望大学決定で重視した項目(大学の知名度、入試難易度設置学部・学科・専攻の順)や、高校教員が生徒に大学選びを指導する際の重視項目(入試難易度、設置学部・学科、入試科目・出題傾向の順)等を挙げ、大学の様々な取り組み等が必ずしも高校の教員や生徒に伝わっていないことを述べた。また、現代GPとは何かがよく知られていないため、「現代GP取得」等とパンフレットに書いても伝わらないこと、具体的なカリキュラムの内容が分かる資料が求められていること等を紹介し、「大学生に対する教育の満足度がアップすれば、保護者や高校の担当者にも伝わる。そうして、知名度が上がれば受験生数もアップする。こうした仕組みを作るべきである」と締めくくった。
 続くパネリスト同士の意見交換や会場からの質疑応答では、学生のどのような能力を育むのか、あるいは、教育開発センターのような専門機関における教職員の配置、学びの評価法等多岐にわたるテーマが提案され、活発な議論が行われた。その後、会場を移しての情報交換会となった。
 二日目は、多様なテーマの分科会とミニ・シンポジウムが半日をかけて行われた。各テーマは次の通り。
 分科会@キャリア教育の実践と課題、Aグローバル化する社会に対応した大学教育、B中小規模大学のFD交流、C短期大学の可能性を拓く、D「学び」の心と初年次教育、E教養教育と第二(初修)外国語教育、FFD義務化時代の教員研修のあり方、G授業支援の新しいあり方、H大学における総合的な学生支援と学生相談体制
 ミニ・シンポジウム@FD組織化への挑戦と課題、A大学の授業は社会の声に応えることができるのか?、B地域社会の中の大学
 半日かけて議論が行われ閉会となった。

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