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平成20年3月 第2308号 (3月12日)

「学士課程教育の構築に向けて」審議のまとめ(案)
  制度・教育部会と学士課程小委の合同会議

設置認可・評価等大学団体の役割・機能の質保証システム盛り込む

 中央教育審議会大学分科会の制度・教育部会と学士課程教育の在り方に関する小委員会の合同会議が、去る七日、東京・港区の三田共用会議所で開かれ、「審議のまとめ」(案)が示された。昨年九月に取りまとめられた「審議経過報告」に、各種情勢の変化を反映するとともに新たに@学生数の約半数を占める人文・社会系の教育の課題、A「共同学部・共同大学院」(仮称)制度の創設、B質保証システムの構築に向けた「大学団体等の役割・機能」などの補足・追加等を記述した。全体の構成は第一章「グローバル化、ユニバーサル段階等をめぐる認識」、第二章「改革の基本方向」、第三章「改革の具体的な方策」となっている。ここでは、第三章についてその概要を掲載する。なお、この「審議のまとめ」が取りまとめられた後、更に関連事項の審議を経て平成二十年の夏前を目途に最終答申となる予定である。

 ▽第三章 改革の具体的な方策
 〈第一節〉学位の授与、学修の評価

 ●「学習成果」を重視する国際的動向=@「何を教えるか」より「何ができるようにするか」に力点を置き、「学習成果」の明確化を図る。A学位授与の方針や人材養成の目的を明確化し、その実行と達成に向けた教育活動を展開。また、国は、学位水準の具体的な枠組みづくりを促進する。
 〈改革の方策〉:学士力に関する参考指針=(1)知識・理解…@多文化・異文化の知識・理解、A人類の文化、社会と自然の知識・理解、(2)汎用的技能…@コミュニケーション・スキル、A数量的スキル、B情報リテラシー、C論理的思考力、D問題解決力、(3)態度・志向性…@自己管理力、Aチームワーク、リーダーシップ、B倫理観など、(4)総合的な学習経験と創造的思考力
 〈第二節〉教育内容・方法等
 (1)教育課程の編成・実施
 ●教育課程の体系性=基礎教育や共通教育、専門基礎教育、専門教育などの適切な区分の設計と実施。
 ●人文・社会系の教育の課題=学生数の約半数を占める人文・社会系の教育をめぐり、教育課程の体系化や構造化の面での課題(順次性の欠如など)が指摘されるとともに、目的意識や職業意識の希薄さ、自主的学習活動への積極性の乏しさ等の課題が伺える。
 〈改革の方策〉:【大学の取組】幅広い学びの保証、コミュニケーション能力の育成、キャリア教育の適切な位置づけ、大学間連携の強化など。【国による支援・取組】大学間の連携・学協会を支援し、分野別コア・カリキュラムを作成、複数大学が連名で学位授与する仕組みの創設など。
 (2)教育方法
 ●学習時間の確保など単位制度の実質化=@学内外を通じた我が国の大学生の学習時間は、諸外国と比較して極めて少ない。A大学設置基準で、講義や実習等に応じて一単位当たり一五〜四五時間とされており、講義であれば一単位当たり最低でも一五時間の確保が必要である。
 ●学習意欲の向上を目指した教育の双方向化・システム化=@授業以外の様々な学習支援体制が整備されているか、積極的に体験活動を取り入れているかなど改めて点検・見直しが必要である。Aその際、少人数指導の推進と併せて、情報通信技術(ICT)等の活用など双方向性の確保に向けた教育システム化が欠かせない。
 〈改革の方策〉:【大学の取組】卒業要件単位数、諸手法(シラバス、セメスター制、キャップ制、GPAなど)を相互に連携させて運用。シラバスについては、@到達目標の明確化、A準備学習の具体的な指示、B成績評価の方法・基準の明示などに留意する。また、講義を魅力あるものにし、多様な教育方法を取り入れる(学生参加型授業、協調・協同学習、社会奉仕体験活動、インターンシップなど)。【国による支援・取組】単位制度の実質化の取組など質保証の在り方を勘案した各種の財政支援を行う。また、大学間の連携、学協会を支援し、分野別のモデル教材を作成する等の取組を促進する。
 (3)成績評価
 @GPAをはじめとする客観的な評価システムを導入し、組織的に学修の評価をしていくことが求められる。A客観的な評価には、資格や検定という外部試験などの活用も考えられる。
 〈改革の方策〉:【大学の取組】成績評価基準の策定と明示。また、GPA導入に当っては、アドバイザー制を導入するなど、きめ細かな履修指導や学習支援を行う。【国による支援・取組】「出口管理」等を先導的に取組む大学に支援を行う。大学間連携、学協会等を支援し、分野別の「学習成果」や到達目標の設定などの取組を促進する。
 〈第三節〉高等学校との接続
 (1)入学者選抜
 ●「大学全入」と高校・大学への影響=@私大の約四割が入学定員割れ、また合格率九〇%以上の大学が一〇〇校余となり、大学への入学が容易となっている。AAO入試や推薦入試など多様化しているが、入試で入学者の学力水準の担保は困難になっている。B学力検査については、獲得した知識の量を問うことに偏ることなく、「生きる力」としての学力を問うような観点から入試の更なる改善が望まれている。
 〈改革の方策〉:【大学の取組】入学者受入れ方針の明確化(高校で履修すべき科目や取得が望ましい資格などを列挙する。高校段階の学習成果を客観的に把握するマイルストーンの一つとして、新しい学力検査(高大接続テスト〈仮称〉)について研究する。
 (2)初年次における教育上の配慮、高大連携
 〈改革の方策〉:【大学の取組】初年次教育の導入・充実を図る。補習教育を充実させる。【国による支援・取組】高等学校までの学習歴の情報が大学に引き継がれていく仕組みを構築する。
 〈第四節〉教職員の職能開発
 ●求められるFDの実質化=現在のFDの課題として、@教員の日常的教育改善の努力を支援するものに至っていない。A教員相互のピアレビューが十分でない。B教学経営のPDCAサイクルにFD活動を位置づけ、教育理念の共有等に生かす仕組みづくりと運用がなされていない。
 ●大学院における大学教員養成機能の充実等=「確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教員の養成」は、ポスドク段階のキャリア形成支援の観点からも重要である。
 ●職員の職能開発=SDの推進に向けた環境整備をFDと並ぶ重要な政策課題の一つとして位置づける。
 〈改革の方策〉:【大学の取組】教員と協働する専門性の高い職員の育成に向け、SDの機会と場を充実する、など。【国による支援・取組】大学間連携や学協会等を支援し、分野別のFDプログラムの研究開発などを促進する。大学教育支援のナショナルセンターの設置を研究する。
 〈第五節〉質保証システム
 (1)設置認可・評価等
 ●設置認可・届出制度=「事前規制から事後チェックへ」の考えの下、設置認可制度が弾力化され、また、告示以上の法令で規定(準則化)された。その結果、大学の新規参入や組織改編が促進されたものの、質保証の面から懸念される状況が生じている。これらの課題については、大学設置・学校法人審議会が課題提起(2面参照)を行い、大学設置基準の見直しを求めている。
 ●大学評価システム、情報公開=平成二十三年度からの評価サイクルの第二期に向け、機関別・分野別両者の評価の仕組みの研究を行う。
 〈改革の方策〉:【大学の取組】自己点検・評価を確実に実施するため、専門的な職員の確保など実施体制を整備する。【国による支援・取組】教員組織、施設・設備などの大学設置基準等の見直しを進めるとともに分野別評価の導入に向けた環境を整備する。
 (2)大学団体等の役割・機能
 ●国等の政府と大学との中間にあって、大学の教育研究活動の自主性・自律性の確保、質保証の基盤としての重要な存在理由がある。国としては公共的使命を持つ大学等で組織される大学団体等との連携を一層密にして、その活動を支援していくことが重要である。

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