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平成20年2月 第2305号 (2月20日)

中教審答申 新しい時代を切り拓く 生涯学習の振興方策

 中央教育審議会(山崎正和会長)は、去る二月十九日、東京・虎ノ門の文部科学省・講堂において第六四回総会を開催し、生涯学習分科会が二年半にわたって審議を重ねてきた「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について〜知の循環型社会の構築を目指して〜」の答申案を審議し、委員全員の賛意の下、出席の渡海紀三朗文部科学大臣に手渡した。答申の概要は次のとおり。

 〈第一部〉今後の生涯学習の振興方策について
 一、生涯学習の振興への要請―高まる必要性と重要性
 ○総合的な「知」が求められる時代であり、社会の変化に対応した生涯学習の振興の必要性が高まっている。
 二、社会の変化や要請に対応するために必要な力
 ○次世代を担う子どもたちに必要な「生きる力」を育む環境づくりが必要。
 ○成人に必要な変化の激しい時代を生き抜くために必要な力を付けるため、生涯にわたって継続して学習できる環境づくりが求められている。
 三、目指すべき施策の方向性
 ○国民一人一人の生涯を通じた学習の支援をし、国民の「学ぶ意欲」を支えるため、学習機会の在り方、多様な学習機会の提供及び再チャレンジ可能な環境整備、学習成果の評価の社会的通用性などを検討しなければならない。
 ○社会全体の教育力の向上のため、学校・家庭・地域が連携するための仕組みづくりに向け、連携・ネットワークと行政機能に着目した新たな行政を推進することが必要である。
 四、具体的方策
 ○国民一人一人の生涯を通じた学習を支援し、国民の「学ぶ意欲」を支えるため、@今後必要とされる力を身に付けるための学習機会の在り方について、学校教育外の学習や活動プログラム等の在り方の検討、A多様な学習機会を提供し、再チャレンジ可能な環境整備のため、多様な学習の場の提供、相談体制の充実、情報通信技術の活用、学習成果を生かす機会の充実等を図る、B学習成果の評価の社会的通用性に向け、履修証明制度等の活用、多様な教育サービスの在り方やそのための質保証の在り方の検討が重要である。
 ○社会全体の教育力の向上のための学校・家庭・地域の連携の仕組みづくりに向け、家庭教育支援の人材養成、学校を拠点としての取組みに向けた学校支援地域本部や放課後子どもプラン等の推進、PTA活動の充実、社会教育施設の活用、大学等の高等教育機関と地域の連携など、具体的な施策を検討する。
 五、施策を推進する際の留意点
 ○「個人の要望」と「社会の要望」のバランス。
 ○「継承」と「創造」等を通じた持続可能な社会の発展を目指すこと。
 ○連携・ネットワークを構築して施策の推進。
 〈第二部〉施策を推進するに当っての行政の在り方
 一、基本的な考え方
 ○これまでの生涯学習の振興方策における基本的な検討課題(生涯学習、社会教育、学校教育の関係等についての概念の整理、社会教育を専門とする人材や施設等の在り方、学習成果の評価の方策、改正教育基本法を踏まえた生涯学習振興行政・社会教育行政の見直し等)の検討が必要である。
 ○生涯学習の理念等についての基本的な考え方として、社会教育行政や学校教育行政、首長部局で実施される施策等を総合的に調和・統合させるための行政が、生涯学習の理念を実現させるための生涯学習振興行政の固有の領域であること、生涯学習振興行政において社会教育行政は中核的な役割を担うことなどである。
 二、今後の行政の在り方―生涯学習振興行政・社会教育行政の再構築
 ○国、都道府県及び市町村の任務の在り方等は、改正教育基本法を踏まえ、教育委員会の新たな役割を明確化すること。
 ○社会教育を推進する地域の拠点施設の在り方として、公民館、図書館、博物館の運営状況の評価及び改善、情報提供に関する規定の整備等に関する機能の活性化が必要。
 ○生涯学習・社会教育の推進を支える人材の在り方は、司書及び学芸員等の資質要件の見直しと研修に関する規定の整備等による社会教育に係る専門職員の資質向上を図る。
 ○NPO、民間事業者等と行政の連携の在り方は、地域の実態等に応じた積極的な連携、民間団体の情報収集や活動内容に関するデータベースの整備を図る。
 ○地方公共団体における体制については、教育委員会と首長との関係、社会教育関係団体に対する補助金交付に関する地域の実情に応じた手続きを弾力化すること。
 ○国の教育行政の在り方は、全国的な観点からの基本的な方針等の策定、横断的な「機能」に対応して柔軟に連携を支援する仕組みを検討する。
*  *  *
 答申を受けて、渡海大臣は、「生涯にわたって、自分の力で考え、問題解決していく「生きる力」を身につけることは、変化の激しい社会の中で欠かせない。例えば、社会人が高等教育機関で学ぶことなど大いに推進したい。必要とあれば関係法令等の整備もしていきたい」などと語った。

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