Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成20年2月 第2304号 (2月13日)

多様化する国立大学 科学技術政策研が財務分析行う

 去る一月に、科学技術政策研究所がまとめた「国立大学法人の財務分析」によると、国立大学法人は、教育、研究、社会貢献の指標において、その機能や特性が多様化していることが分かった。また、研究志向の大学ほど基盤的資金に対する外部資金率が増加し、教育、社会貢献志向の大学ほど外部資金率が低いことが分かった。詳細は次の通り。

 平成十六年四月に国立大学等が法人化して以来、従来よりも自律的かつ柔軟な運営が可能となった。その後三年が経過し、各法人も中期計画に沿って、それぞれの特徴を生かした教育・研究を進めている。
 一方、政府の研究開発投資全体の拡充を図る中で、第三期科学技術基本計画においては、更なる競争的資金の拡充を目指しており、基盤的資金(運営費交付金、施設整備費補助金)と競争的資金の有効的な組み合わせを検討するとされている。
 これらに関連し、平成十八年十二月より、総合科学技術会議において、適切な競争的資金のあり方が検討され、また、各省庁においても、研究資金制度に関し、適宜検討・改善が図られてきている。
 これらの背景等から、国立大学法人等により公開されている財務諸表の分析を行った。
 まず、大学類型別に運営費交付金・自己収入・外部資金・施設費収益・科学研究費補助金の割合を見ると(図)、運営費交付金が経常収益に占める割合(運営費交付金依存率)が高いのは、大学院大学、教育系大学、文科系中心大学の順であった。また、運営費交付金依存率が低いのは、医科系大学と中規模病院有大学であり、八七大学の平均は四一・〇%であった。
 自己収入(附属病院収益を含まない)が経常収益に占める割合(自己収入依存率)が高いのは、文科系中心大学と中規模病院無大学であった。また、附属病院を有する大学のうち、病院収益が経常収益に占める割合が最も高いのは、医科大学であり、五五・一%。また、交付金依存率は約三〇・〇%であった。
 外部資金及び科学研究費補助金収入が経常収益に占める割合(外部資金等比率)が高いのは、大学院大学、理工系中心大学、大規模大学であった。教育系大学、文科系大学は、外部資金等比率は僅少であり、外部資金が多少増加しても、法人経営を支えられるほどにはならない。
 次に、基盤的資金と外部資金の配分と、教育、研究、社会貢献の経費や収益の指標を組み合わせて分析したところ、次の一〇グループに分類が出来た。このことから、国立大学法人が同一の機能や特性を持つのではなく、多様化していることが示された。
 グループ@:教育と研究の二つに特色を見出している大学。横浜国立大、電気通信大、名古屋工業大、東京外国語大等
 グループA:研究を中心に大学の機能を分化している大学。北海道大、名古屋大、九州大、東京農工大、奈良先端科学技術大学院大等
 グループB:グループAより、更に研究に特化している大学。東北大、東京大、京都大、大阪大、東京工大
 グループC:社会貢献度が高い大学。弘前大、島根大、高知大、大分大、東京学芸大、上越教育大、福岡教育大等
 グループD:グループCより、更に社会貢献度が高い大学。京都教育大、鳴門教育大
 グループE:グループ@と同じく、より教育と研究の二つに特色を見出している大学。総合研究大学院大
 グループF:教育にやや特化している大学。茨城大、和歌山大、小樽商科大、東京芸術大、滋賀大、愛知教育大、奈良教育大等
 グループG:教育、研究、社会貢献のバランスが取れている大学。千葉大、神戸大、岡山大、広島大、お茶の水大、一橋大等
 グループH:教育、研究が高く、社会貢献がやや低い大学で、グループGの次にバランスが取れている大学。筑波大、新潟大、東京海洋大等
 グループI:グループD、Cに次いで社会貢献に特化している大学。秋田大、山形大、香川大、琉球大、滋賀医科大等
 研究志向のグループA、Bは、結果的に基盤的資金に対する外部資金などの割合も高いグループとなっている。つまり、研究を強く推進するためには、外部資金の取得がもはや不可欠であることが分かる。
 社会貢献か教育が高い大学は、総じて基盤的資金に対する外部資金などの割合が低い大学が多かった。

Page Top