Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成20年2月 第2303号 (2月6日)

高齢・女性ポスドクのキャリア 科学技術政策研がインタビュー調査行う

 科学技術政策研究所は、去る一月、「ポストドクター等のキャリア選択と意識に関する考察〜高年齢層と女性のポストドクター等を中心に」のインタビュー調査をまとめ、公表した。同調査では、関東地域の大学及び大学共同利用機関で研究活動に従事している三五歳以上の高年齢層や女性のポストドクター等六八人に対して、キャリアパスの特徴、研究職への拘り、非研究職に対する意識等について把握する目的で、インタビュー調査(期間:平成十八年十月〜平成十九年一月)を実施した。概要は次の通り。

 ポストドクターなど若手研究人材は我が国の研究活動の活発な発展に寄与しており、政府もポストドクターを対象とした支援をしてきている。第三期科学技術基本計画においても、ポストドクターなど若手研究者の採用過程における透明化や自立支援、アカデミックな研究職以外の進路も含めたキャリアサポートの推進などが提言されている。
 ポストドクター等の雇用状況調査等を参考にすると、ポストドクター等約一万五〇〇〇人のうちの四分の一程度が三五歳以上(四〇歳以上では一割程度)であり、また、ポストドクター等に占める女性の割合は四〇歳以上で高まる傾向が見られている。
 図1は、教員の職階別平均年齢の男女差の推移。助教授については、過去において女性の平均年齢が男性よりも高く、助教授への昇進における男女差が存在していた可能性もうかがわせる。
 図2は、ポストドクター終了直後の移動先の分野別職業。三八七〇名のポストドクター等を対象とした進路動向調査より、分野別職業内訳を作成したもの。
 @高年齢層のポストドクター等に見るキャリアパスの特徴
 ポストドクター等のうちの高年齢層を構成するグループは、単にポストドクター等を複数回繰り返して高年齢に至った者ばかりでなく、過去にポストドクター以外の職を経験した者もある程度含まれていることが明らかとなった。特に、今回の調査対象者のうち、四〇歳以上のポストドクター等については、七人中六人がポストドクター以外の職を過去に経験している。
 ポストドクター等になった経緯は様々である。もともと研究に興味があったこと、民間企業等で研究活動を希望していたが研究の機会が得られなかったこと、民間企業での仕事や職場になじめなかったことなどが理由として挙げられる。
 今回の調査対象者においては多様な職業経験を有するポストドクター等が多く、キャリアアップする上で、研究者の応募用件などに見られる採用時の年齢制限を障害と感じている者も多い。
 Aポストドクター等にとっての研究と家庭の両立
 出産・育児による研究の一時中断などの再開を可能にする等の最近の支援措置に対しては、好意的な意見が聞かれた。
 子どもを抱えるポストドクターの一部は、雑務などが比較的少なく、研究時間が比較的自由に取れる環境が、研究と育児などとの両立を図る上で都合がよいと考えている。
 その一方で、非常勤雇用やプロジェクト雇用(任期付き)であるために、託児施設への手続きの際に不都合が生じる、育児休暇の取得が困難であるといった意見があった。
 Bポストドクター等の研究職への拘り
 今回の調査対象者においては、大学や公的研究機関の研究職を第一希望としているポストドクター等が大半であった。
 研究職を第一希望としているポストドクター等は、「自分の希望するテーマ」や「職位の高いポスト」よりも、長期的に安定して「研究できること」を希望している者が多い。
 このたびの調査対象者については、学部卒業、修士課程修了、博士課程修了当時のいずれかにおいても「就職活動を一切しなかった」と答えた者が約三分の一に上っており、その理由として、学生時代から研究職を目指していたなどの積極的な理由の他、「就職などはまだいいか」といった理由を挙げるものもいた。
 Cポストドクター等の非研究職に対する意識
 調査対象者の半数程度が研究職以外の職業にもある程度興味を示しており、必ずしも研究職しか眼中にないといった状況ではない。研究職以外の職業にある程度興味を示したポストドクター等では、具体的な職業として「科学技術コミュニケーター」を挙げる声が多かった。
 Dポストドクター等の就職活動状況など
 公募(就職)情報の主な入手先としては、「上司(指導教官など)からの紹介」と「インターネットの情報」が多い。特に、「インターネットの情報」と回答した者の殆どが具体的なサイト名として怏ネ学技術振興機構の「研究者人材データベースJREC―IN」を挙げている。
 実際の就職活動においては、ポストドクター等が自ら収集した公募(求人)情報に基づき就職活動を行っている場合が多い。特に、博士課程と異なる機関でポストドクター等をしている者からは、「上からポストなどの紹介はない」といった声もあった。
 研究職の公募情報を収集する際に不足している情報としては、「採用(評価)基準」や「給与などの雇用条件」を挙げる者が多く、また、女性では「産休・育休制度などの詳細」が不足していることを指摘する声が多かった。
 研究職以外の職業への就職活動で不足していると思う情報については、「ポストドクターが応募可能な公募(求人)情報」や「企業等がポストドクターに求める人材像などの情報」が多く挙げられた。また、「ポスドク後のキャリアパスを提示して欲しい」といった意見もあった。

図1 教員の職階別平均年齢の男女差の推移

図2 ポスドク終了直後の移動先の分野別職業(進路動向調査より)

 ※画像をクリックしていただくと拡大された画像をご覧いただけます。

Page Top