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平成20年2月 第2303号 (2月6日)

第581回理事会 20年度事業計画・予算の基本方針決まる
  議事終了後に渡海文科大臣等と懇親深める

 20年度政府予算案など文科省担当課長が説明

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る一月二十五日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で、平成十九年度第二回企画財務委員会(担当理事=廣川利男東京電機大学学園長)において、平成二十年度の同協会の事業計画案並びに予算案の大枠を協議した上で、同日、第五八一回理事会を開催した。昨年十一月以来二か月ぶりの開催となり、協議事項の関係から、初めに事業報告を行い、その後、協議事項の審議が行われた。協議事項では、平成二十年度事業計画案・予算案の編成方針のほか、任期満了に伴う協会役員改選の基本方針、平成二十年度の私大関係政府予算案・税制改正等についての文部科学省の担当課長等からの解説などが行われた。また、年が明けて初の理事会であることから議事の終了後には会場を移しての懇親夕食会が開かれ、公務多忙の中、渡海紀三朗文部科学大臣もかけつけ、出席の理事らと懇親を深めた。

 開会に当たり大沼会長は「平成二十年度の私学助成は対前年度比一%減となったが、地域振興に係る大学間連携への支援や科学研究費補助金の間接経費措置などが実を結んだ。もとより基盤的経費の経常費補助金が減額されたままでよしとはしないが、厳しい中でお互いに知恵を出し合い、それぞれに特質を出していきたい。三月の総会に向け、新たな一歩を踏み出していきたい」と挨拶した。
 協議に先立って、昨年十二月八日に逝去された前会長の橘重義氏(東京理科大学元理事長)及び一月三日に逝去された元常務理事の水野睦郎氏(東京薬科大学元理事長)の冥福を祈り黙祷を捧げた。
 報告事項に入り、はじめに、中央教育審議会教育振興基本計画特別部会の審議に対する私立大学団体連合会の意見として、黒田壽二副会長から、「GDPに対する高等教育への公財政支出比率をOECD諸国並み(約一%)の水準にすること、高等教育にかかる国私間の公財政支出の格差是正をすること」などを明記した上で、「重点的に取り組むべき事項として、@社会の信頼に応える学士課程教育を実現すること、A大学等の国際化を推進すること、B大学等の教育研究を支える基盤を強化すること、C私立学校の振興策を充実すること」などを意見発表したことが報告された。
 次に、私学共済事業に関する諸問題について、日本私立学校振興・共済事業団の加藤 豊理事が、年金・医療保険等のポイントを説明した。年金については、公的年金制度一元化が未だに国会での審議に至っていないこと、職域部分についても審議は決着していないこと、また、医療保険では、政管健保の財源に係る拠出金問題、さらに、生活習慣病に伴う医療費削減のための特定健康診査・特定保健指導等について解説した。
 協議事項に移り、まず、同協会の平成二十年度事業計画案の策定方針及び予算案の編成方針について、理事会に先立って開かれた企画財務委員会での議論に沿って、廣川副会長が大枠を説明した。
 事業計画については、十九年度事業等に係る合同研究会での議論、加盟校から寄せられた意見等を参考に企画財務委員会で今後とも協議して詰めの作業に入ること、また、予算については、特段の支出等を見込んでいないことから、会費の単価等は据え置くこととしたい、との提案が行われ、承認された。
 なお、十九年度事業の進捗状況、一昨年の六〇周年記念式典の折に表明したガバナンス改善による「私立大学の使命達成」の実行方などの補足説明が、小出秀文事務局長よりあり、提案通り承認された。
 次に、総会で諮られる任期満了に伴う同協会役員改選の基本方針についても協議が行われた。
 引き続き、故橘前会長の「偲ぶ会」の実施について、同協会の最高顧問であったこと、また、元関東地区連絡協議会の会長でもあったことから、来たる二月二十二日(金)、役員及び関東地区会員大学等で内々に東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で行うことが決まった。
 教育再生会議、中教審等の審議動向と大学改革等への対応についてでは、まず小出事務局長より概要が説明された。教育再生会議は昨年十二月末に七つの柱を取りまとめており、そのうち、「学力の向上」では大学発教育支援コンソーシアムの推進により新しい教育モデルの創出と実証、「大学・大学院の抜本的な改革」では成績評価の厳格化による卒業者の質の担保、さらに、「(教育)現場の自主性を活かすシステムの構築」では教員養成の抜本的改革などを掲げているが、今後の最終まとめ等に注目していきたいと述べた。
 次に、黒田副会長からは中教審大学分科会制度・教育部会の学士課程教育の在り方に関する小委員会(黒田壽二主査)における、全入時代を迎えての高等学校と大学との接続に関するワーキンググループの議論の動向(2面に関連記事)が説明されるとともに近々に取りまとめられる留学生ワーキンググループ等の報告も受けて同小委の審議を重ねていくと説明があった。
 協議事項の最後に、平成二十年度私立大学関係政府予算案及び学校法人関係税制の決定並びに平成二十一年度の展望等について、文科省の各担当課長から説明が行われた。
 ▽税制改正(杉野 剛私学行政課長):寄附金の所得控除限度額の五〇%への拡大要望は認められなかったが、法人の学校法人への直接寄附について、損金算入限度額が拡充された。このことは、寄附金に係る税制改正要望をしていたから実現できたものと受けとめ、今後とも、寄附文化醸成に向けた方策を考える。
 ▽予算案(藤原 誠高等教育企画課長、芦立 訓私学助成課長):高等教育局のフレームについて、国公私立大学共通の支援として六八〇億円(対前年度六五億円増)、国立大学の運営費交付金等一兆一八一三億円(同二三〇億円減)、私学助成四五〇一億円(同四五億円減)、奨学金事業の充実九三〇五億円(同八〇一億円増)などについて説明するとともに、特に私学助成については、基盤的経費の経常費補助金に軸足を置き今後とも対応するものの、私学振興関連施策にも知恵を絞り、@意欲ある私学への支援、A税制改正、B大学教育改革の支援、C科学技術研究基盤の充実等にも目配りしていく。
 ▽国公私を通じた大学教育改革の支援の充実(中岡司大学振興課長):私立大学を支える新規事業として「質の高い大学教育推進プログラム」(特色GPと現代GPの統合による)八六億円、知の拠点としての「戦略的大学連携支援事業」三〇億円、「大学病院連携型高度医療人養成推進事業」一五億円などを中心に説明した。
 ▽奨学金事業の充実(村田善則学生支援課長):貸与人員を一二一・九万人(同七・五万人増)九三〇五億円(同八〇一億円増)としたこと、特に、貸与月額(有利子)として、大学等一二万円、大学院一五万円を創設したことを説明。
 ▽科学研究費補助金(磯谷桂介学術研究助成課長):私立大学等からの申請の多い「若手研究(B)」「若手研究(スタートアップ)」に新たに三〇%の間接経費を措置することのほか、従来の「特定領域研究」「学術創成研究費」を統合し、人文・社会科学分野の振興に配慮した「新学術領域研究」の新設などを解説するとともに、今後とも間接経費未措置の分野にも導入を検討していく。
 これら文科省の担当課長からの解説の後、質疑応答が行われ協議は終了した。
 理事会終了後には、公務多忙の中、渡海文科大臣、磯田文雄私学部長も駆けつけ、新年懇親夕食会が開かれた。渡海文科大臣は「日本の高等教育のレベルを高めるべく質の担保を図り、私学の皆さんにも大いにがんばっていただきたい」と述べ、今後の連携を図るべく懇親を深めた。

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