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平成20年1月 第2301号(1月16日)

本学の建学の精神

 東北薬科大学理事長・学長 高蛹ウ明

 本学は、今年で創立六九周年を迎えており、現在、来年の創立七〇周年の記念事業となる全面的なキャンパス整備事業が進められている。平成十三年に事業の実施を決定し、マスタープラン、設計、建設の順で進めてきたが、何分にもキャンパスの有効面積が狭く、I〜III期に分け、建設、既存校舎の解体、建設という具合いで丸々七年も経過している。全面的な竣工は来年春の予定である。当初の計画通りに順調に進行してはいるものの、近年の大学改革の流れは予想以上に速く、加えて、薬剤師養成教育の六年制への移行、薬学部の倍増、そして急激な少子化と、本学を巡る環境は激変し、時代の波に翻弄された中でのキャンパス整備事業となっている。現在のように数年先の展望が利かない状況では、場合によっては、竣工間もないのに改修するといったことも、あり得ない事ではないと覚悟を決めている。
 すでにI期工事では教育研究棟、実験動物センター、ラジオアイソトープセンターが完成しているが、教育研究棟には、教職員から募集をして「VERITAS ウェリタス」という名称をつけた。すでに学生、教職員の間では名前が定着し、「ウェリタス」と呼びあっているのを聞くと、思わず嬉しくなってしまう。ウェリタスとはラテン語で「真理」を意味する言葉であり、ヴェリタスとも発音するらしい。
 本学では、大学創設者の高蜍`一先生の残された言葉「われら真理の扉をひらかむ」を建学の精神としており、これは石碑に刻まれ「開真の碑」として残されている。創設者が大学の果たすべき役割としての学術研究の重みを、強い思いで表現したものと考えている。しかし、今日のように大学がユニバーサル化し、大学では、まずなによりも教育が第一であり、次に社会貢献、研究なぞは次の次というように大学に求められるものが次第に変わってきている時代にあっては、本学の建学の精神は、あまりにもまともで硬過ぎやしないか、などとこの数年、本学の建学の精神について、いろいろと考えないでもなかった。
 しかし、一昨年、六〇年ぶりに改正された教育基本法では、新たに(大学)の項が新設され、第七条の中で「大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、…」とあり、まさに本学の建学の精神ともいうべき文言が盛り込まれており、思わず創設者の高邁な志に敬意を表した次第である。
 十八年度よりスタートした新しい薬学教育制度により、薬学部は医療人としての薬剤師養成に本格的に取り組むこととなった。今後は、医学部のように高度専門職業人養成を行いながら、基礎薬学、生命科学などの研究をどう両立させていくのかが最大の課題である。私学を取りまく環境はますます厳しくなっており、そのような状況の中で薬剤師養成に加え、高度な研究を続けていくことは決して容易なことではない。しかし、教育と高度な研究を両立させ、大学本来の「学術の中心として、深く真理を探究して新たな知見を創造する」との使命を果たすことが、本学の目標であり、建学の精神に沿うものだと考えている。

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