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平成20年1月 第2299号(1月1日)  2008年新春特集号

2008年―年頭所感
  高等教育の更なる充実・発展を

日本私立大学協会会長/文化女子大学理事長・学長 大沼 淳

 明けましておめでとうございます。昨年末には安倍政権から福田政権に変わるなど、政治情勢が不透明となり、平成二十年度へ向けた我々の予算等の要望活動も、今ひとつ効果的な展開が出来ない面もあったのではないかと思います。
 さて、少子化によって一八歳人口はいよいよ一二〇万人台へと減少してしまいます。この数字は約一〇年ほど継続することが予想されています。この一八歳人口の踊り場的状況に各大学がどう対処していくかが求められる年になるのではないかと思います。平成十七年の大学審議会の“将来像答申”で機能別分化が謳われましたが、各大学は高等教育機関の中でどのような機能を自覚し、建学の精神を忘れることなく自らの特徴・特色を明確に打ち出していくことが必要になります。
 昨年は、秋の総会を九州支部の担当で二七年ぶりに沖縄で開催致しました。沖縄にある加盟四大学には特にお世話になりました。二七年前の総会は、加盟二〇六大学から一〇三大学二〇〇余名が参加したそうです。今日では、我が協会の加盟大学数は三七七校であり、約二倍にもなっておりその責任の重さを改めて痛感した次第です。
 そして、その総会の折には、全国各地の加盟校の皆さん方から「地方は厳しい」という生の声をお聞きしました。総会では、協議の末、“地域連携”を強化し“地域活性化”を目指すことを重点事項に掲げ、今後の事業展開に織り込んでいくことが満場一致で承認されたのです。
 また、“地域連携”については、今まで以上のよりスケールアップした連携の在り方を模索していくことが決意されたのです。
 大学の使命は教育、研究と地域貢献の三つがあると言われますが、この地域連携により文字通り地域貢献の役割が果たせることになります。今後の協会の活動にご注目いただきたいと思います。なお、この地域連携に関わる予算が措置されることによって、地方の大学にも光を当てることができるはずです。
 一昨年の教育基本法の改正を受け、新たに「大学」「私立学校」等が規定されましたが、同時に「教育振興基本計画」を策定することも規定されており、昨年は中央教育審議会でも審議され、今年度内に取りまとめられる予定です。さらにグローバル化時代の質保証の観点からの「学士課程教育」の構築については、黒田壽二副会長が小委員会の主査を務め、やはり今年度中に最終取りまとめが行われるようです。
 そのほか、今年も注視していかなければならないのは、構造改革特区で認められる株式会社立大学の全国展開の動向です。このことは公教育体系としての学校法人制度の根幹を揺るがしかねないものと憂慮しています。言うまでもなく私立学校は私人が私財を提供して学校法人を設立し、設置したものであり、公共性と自主性、そして永続性とを柱にしているのです。私立学校はこの自主性のシンボルである建学の精神の下、公教育を担ってきたのです。これに対して利益追求を一義的とする株式会社に学校設置を認めた上で、「校地・校舎まで借りものでよい」という規制緩和は、やはり公教育を乱すものと言わざるを得ません。
 高等教育変革期の中、私立学校の原点を見つめ直して、私学振興、ひいては我が国の高等教育全体の更なる充実・発展に寄与したいと願っています。
 加盟大学のご発展と皆様のご健勝を心より祈念申し上げます。

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