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平成19年12月 第2298号(12月19日)

教育振興基本計画ヒアリングに対応

 日本私立大学団体連合会(安西祐一郎会長)は、去る十二月五日、東京・青山のフロラシオン青山で開かれた中央教育審議会の教育振興基本計画特別部会で、同特別部会が公表した「検討に当っての基本的な考え方」「重点的に取り組むべき事項」に対するヒアリングに、同連合会高等教育改革委員会の黒田壽二委員長(金沢工業大学学園長・総長)と鈴木典比古委員(国際基督教大学学長)が臨み、意見発表した。
 はじめに、次の四つの視点をまとめた上で、個別事項について意見を述べた。
 一、我が国が国際的牽引力を有し、国際社会における重要な地位を占めていくためには、その基盤となる「知」の創造と人材の育成が不可欠である。そのためには、我が国の大学が国際的知的優位性を確保し、その発展を支える人材を多数輩出していくことを、最優先の国家戦略と位置付けるべきである。
 その喫緊の措置の一つとして、〇・五%と極めて低い状況にある我が国の国内総生産(GDP)に対する高等教育への公財政支出の比率を、大学の国際的通用性の確保はもとより、世界の平和と人類の発展に寄与するために、OECD諸国並み(約一%程度)の水準へと高めるべきである。
 二、我が国の大学数、学生数の両面において約四分の三を占める私立大学は、各大学の独自の建学の精神に基づき、活力ある多様な人材を育んでいる。不確実な時代であっても、少子化はほぼ二〇年先まで確実である。だからこそ今、個性や多様性を有する私立大学の役割は、ますます重要になってきており、国はその認識を持ち、教育面においては私立大学を中心に据えた計画を策定するべきである。
 三、今日の国立大学と私立大学の役割の違いを明らかにし、私立大学は国立大学の補完であるかのような、戦前から続いている現行システムを見直すべきである。さらに国立大学に対する国費投入の在り方の再検討と、高等教育にかかる国私間の公財政支出の格差是正を計画に明記することが国家の浮沈をかけた喫緊の至上命題である。
 四、隣国の中国は戦略的な教育・研究の国家政策により世界で活躍できる人材を多数輩出し始め、世界をリードする強国になろうとしている。しかし、いまの我が国の教育政策は、公的財政投入に伴う人材育成と国家社会のための有為な人材の社会への労働配分政策、世界の平和と発展への貢献と国民の幸福の追求といった観点が見えない。
 国民が生涯にわたって学習し、その学習により個人の幸福の構築と社会の発展に寄与することが次代の高等教育の在り方であると考えるが、生涯学習をはじめ国の教育政策は、米国の教育制度を準用しているにもかかわらず、国家としての独自のグローバリゼーションに対応するには戦略性が足りない。
 いま必要なことは、世界最高水準の卓越した教育研究拠点の形成をはじめとする、国の威信をかけた国家戦略であり、国は、その考え方に立ち、計画を策定するべきである。
 〈個別事項に対する意見〉
 ●基本的な考え方について(概要)
 @『我が国教育の成果と現状の課題』で、規範意識や倫理感の低下について「社会の成熟化に伴って生じてきた課題」と論じられているが、「我が国固有の問題」としてその原因を分析する必要がある。
 A『今後の教育施策の目指すべき基本的方向』で、「安全・安心で質の高い教育環境を整備する」という項目から、「公教育を担う私立学校の振興を図る必要がある」という部分を独立させ、『私学振興』として明確に論じることなど。
 ●重点的に取り組むべき事項について(概要)
 @『社会の信頼に応える学士課程教育を実現する』では、学士課程の質の向上・保証を行うことが謳われているが、中学校や高等学校修了時の質保証もその前提として必要となろう。検討してほしい。
 A『大学等の教育研究を支える基盤を強化する』では、国立大学に限定した記述ではなく、私立大学に対する支援を明確にする。
 B『私立学校の振興策を充実する』では、各種競争的資金の配分にあたって、国公私の設置形態に影響されて採択のバランスを欠くことのないように明記することなど。

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