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平成19年11月 第2296号(11月21日)

気候変化への"適応"も必要 気候変動の第4次報告書

 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」では、去る十一月十二日から十七日に、スペインで開催された第二七回総会において、第四次評価報告書統合報告書(政策決定者向け要約)が承認された。
 同機関は、人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、一九八八年に設立。以来、三回にわたり評価報告書を発表してきた。このたびの第四次評価報告書は、今後、地球温暖化対策のための様々な議論に科学的根拠を与える重要な資料となる。主な概要(速報版)は次の通り。

主題1 気候変化とその影響に関する観測結果
 気候システムの温暖化には疑う余地がなく、大気や海洋の全球平均温度の上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である。地域的な気候変化により、多くの自然生態系が影響を受けている。

主題2 変化の原因
 人間活動により、現在の温室効果ガス濃度は産業革命以前の水準を大きく超えている。二十世紀半ば以降に観測された全球平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い。

主題3 予測される気候変化とその影響
 現在の政策を継続した場合、世界の温室効果ガス排出量は今後二、三〇年増加し続け、その結果、二十一世紀には二十世紀に観測されたものより大規模な温暖化がもたらされると予測される。分野毎の影響やその発現時期、地域的に予想される影響、極端現象の変化に伴う分野毎の影響など、世界の気候システムに多くの変化が引き起こされることが具体的に予測される。

主題4 適応と緩和のオプション
 気候変化に対する脆弱性を低減させるには、現在より強力な適応策が必要とし、分野毎の具体的な適応策を例示。適切な緩和策の実施により、今後数十年にわたり、世界の温室効果ガス排出量の伸びを相殺、削減できる。緩和策を推進するための国際的枠組み確立における気候変動枠組条約及び京都議定書の役割は、将来に向けた緩和努力の基礎を築いたと評価された。

主題5 長期的な展望
 気候変化を考える上で、第三次評価報告書で示された次の五つの「懸念の理由」がますます強まっている。
 一、極地や山岳社会・生態系といった、特異で危機にさらされているシステムへのリスクの増加
 二、干ばつ、熱波、洪水など極端な気象現象のリスクの増加
 三、地域的・社会的な弱者に大きな影響と脆弱性が表れるという問題
 四、地球温暖化の便益は温度がより低い段階で頭打ちになり、地球温暖化の進行に伴い被害が増大し、地球温暖化のコストは時間とともに増加
 五、海面水位上昇、氷床の減少加速など、大規模な変動のリスクの増加
 適応策と緩和策は、どちらか一方では不十分で、互いに補完しあうことで、気候変化のリスクをかなり低減することが可能。既存技術及び今後数十年で実用化される技術により温室効果ガス濃度の安定化は可能である。
 今後二〇〜三〇年間の緩和努力と投資が鍵となる。

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