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平成19年11月 第2295号(11月14日)

就職部課長相当者研修会を開催 216大学から287名が熱心に研修
  「キャリア教育と就職支援」テーマに

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)の平成十九年度(通算第三二回)就職部課長相当者研修会(担当理事=大橋秀雄工学院大学理事長、委員長=浦田雄司日本福祉大学キャリア開発部次長)は、去る十一月七日から九日まで、静岡県浜松市のホテルで「多様な学生に対するキャリア教育と就職支援―学び、働き、生きるを考える―」をメインテーマに、加盟大学三七六大学から二一六大学二八七名が参加して、報告、発表、講演、事例発表など三日間にわたって熱心に研修が行われた。

 一日目は開会に当って、大橋担当理事から「大学入学での二極化が進んでいる中、就職においても、就職先の知名度や規模などを問わなければ就職全入時代が始まっているようです。このような状況の中で、高い目標を掲げ、自ら努力する積極的な学生と受身の学生の二極化が目立ってきました。意識の低い学生をどう励まし、どう指導するかで、ご苦労されておられることと存じます」との開会の挨拶の後、報告および研修に入った。
 はじめに、小出秀文事務局長から、概説「私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題」―新たな大学像、機能分化を考える―と題して、同協会の六〇年の歴史とその時代の社会情勢の分析、さらに定員割れ学校数の推移、高等教育を巡る共通的背景として、国立大学の法人化、株式会社立大学、国大法人別運営費交付金と私立大学等経常費補助金について、さらに平成二十年度私立学校関係政府予算概算要求の概要では、地方の大学教育の一層の充実を図るとした、「地域振興の核となる大学の構築」として、五〇億円を要求していることなどの報告があった。
 休憩の後、浦田雄司委員長が「雇用環境を取り巻く諸情勢と就職指導のあり方」と題して発表した。
 大学生は大人だから自己責任であり、学校の責任ではないと言っていられない状況であり、マンツーマン指導などで最後までサポートすることが必要である。キャリア教育は入学から卒業までの仕組みを作るという大変な作業だが、教員と職員の協力、協同して作成することが大事であると発表した。
 続いて、(株)読売新聞東京本社調査研究本部主任研究員の北村節子氏から、「今日の女性就労を巡る現象と課題」―多様な学生に対する就職支援の視点から―と題して、「仕事に就こうとする女子学生と話した感想は、恋や仕事のことなど、目先の事に一生懸命で、仮に九〇歳まで生きるライフスタイルなどを尋ねると、驚くほどのナイーブな面をもっており、彼女らに的確な情報を提供することが大事である。企業社会だけで生きていない女性にとって、ベースキャンプを出ていって五年後、一〇年後に事業に失敗した人、挫折した人、もっと人生を豊かに生きたいという女性たちに大学はフォローすることが出来ないか」、など体験を踏まえて講演した。
 次に、京都女子大学教授の槇村久子氏の「京都女子大学におけるキャリア教育と就職支援」と題しての事例発表では、「仕事でも家庭や地域社会でも、個人として、また、高齢化社会の中で人生を楽しく生きていくためには、自分のデザインを創る力、様々な「場」で決定していく力、生涯自分に必要なことを学習していく力が求められる」として、キャリア教育科目の設置やキャリア開発、進路就職センターとの連携、中高大連携プログラムなど、一年を経過した段階での取組み状況を発表した。
 なお、夕刻からは情報交換会が催され、浜松市近郊の加盟大学(浜松大学、静岡文化芸術大学、静岡理工科大学)から学長等が出席した。
 研修二日目は、事例発表と講演、班別討議が行われた。事例発表では、はじめに、広島経済大学におけるキャリア形成支援の試み―「ゼロから立ち上げる」興動人の育成を目指して―と題して、同大学キャリアセンター部長の五百木宏祐委員から、「人材育成を目指して、既成概念にとらわれることなく、ゼロからものごとを考え、失敗を恐れず、他者と協働して「何か」を成し遂げることができる興動人」について、興動館の組織体制や目的について説明した。さらに、興動館プログラムとして、元気力、行動力、企画力、共生力の各フィールドと社会人基礎力との関連や学生らが活動する興動館教育の様子がスライドや動画を用いて発表が行われた。
 次に、北海学園大学就職課長の夏堀 昇委員から、北海学園大学におけるキャリア支援としての公務員対策の実践について、「伝統的に公務員志望者が多く、二〇年以上前から民間企業志望者と公務員志望者を分けた形でガイダンスを行っている。公務員志望者には、各官庁で開催する官庁説明会の案内、模擬試験等の説明で学生のモチベーションをあげている」など具体的内容について説明を行った。今後の課題として、公務員志望者への指導・支援等において、的確に対応できる体制づくりが必要である」と述べた。
 休憩の後、(株)東洋経済新報社第一編集局次長兼証券部長の田北浩章氏から「就職指導に役立つ良い会社、避けたい会社」―企業の見方教えます―と題して、業績のよい会社、悪い会社、成長する会社、衰退する会社を会社四季報の資料を基に、会社の業績、株主への配当、株主持分比率、キャッシュフロー、継続疑義の記載の有無などについて丁寧な説明が行われた。最終的には、社長が明確な企業理念を持っているか、さらにホームページなどに社長の顔写真も掲載しているかどうかも重要なポイントになる」などと、現職の立場から意見を述べた。
 昼食・休憩後はテーマごとに一五班に分かれて班別討議が行われた。
 研修最終日は、(有)プライミング代表取締役の室井俊男氏から「自発的キャリア形成支援プログラムの考え方と実践」と題して、「学生に対するキャリア形成支援のあり方では、一年生には目を開かせる、二年生には意図に基づいた行動の習慣化、三年生には自己表現の具体化などについての解説、さらにコミュニケーションの秘訣は話す力よりも傾聴力が大切であること、グッドコミュニケーションの心得は、伝わるのでなく伝えることである。学生には大人が人生の先輩として自ら体験した成功や失敗談、そこから学んだ教訓、そして本音をもっと語って聞かせる、できるだけ早い時期に学生が自分の大学生活を熱く語れるように導くことがキャリア形成につながること、大人がいつも元気で輝いていることである」、など、グループシェア(共有)タイム、エゴグラム等の演習を交えて講演を行った。
 講演終了後、大橋担当理事の閉会の挨拶で三日間の全日程を終了した。

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