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平成19年7月 第2279号(7月4日)

学生相談における全学的な取り組みについて
  事務組織改編とワンストップサービスの現状と課題 −1−

札幌大学事務局次長 岡地 功

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は平成十八年七月五日から七日まで、兵庫県神戸市内のホテルにおいて、平成十八年度学生生活指導主務者研修会を開催した。当日は二一一大学から三〇〇余名が参加し、「人間力を育てる」をメインテーマに講演や報告、班別討議等が行われた。本紙では岡地 功札幌大学事務局次長の事例発表「学生相談における全学的な取り組みについて」―事務組織改編とワンストップサービスの現状と課題―を三回に分けて掲載する。

〈はじめに〉
 私がこのような場で発表することは、少し的が外れているかもしれません。と申しますのは、この研修会は学生部関係の学生部長、学生委員及び学生課長相当者の研修会であり、私の業務は教務関係と就職関係の事務長をさせていただいているからです。
 従って、学生生活主務者研修会の枠を越えたご説明とご提言となりますので、冒頭お断わりさせていただきたいと思います。
 近年「学生支援」という言葉が盛んに使われるようになり、「学生中心の大学づくり」とはどのようなことなのかを検討したときに、本学では事務局組織の改編から着手しなければならないことに気がついたわけです。
 ここにSPSを「Student Partner Service」と表記させていただきましたが、決して間違っているのではありません。どうしてこのような考えにいたったのかについては、これから説明させていただきます。
 一、札幌大学の概要
 本学は、札幌市豊平区に昭和四十二年、開学いたしました。キャンパスは約二〇万平方メートル(東京ドーム約四個半)の面積に、大学院は五研究科、大学は五学部九学科そして短期大学の二学科を設置しております。
 学生数は、約六〇〇〇人、教員一六〇人、職員九二人、卒業生は約四万八〇〇〇人の大学で、来年創立四〇周年を迎える比較的新しい大学です。
 二、学校法人の組織図
 学校法人全体の組織について、ご説明いたします。
 先ほど簡単に触れましたが、本学は一法人で同一キャンパス内に一大学と一短大があります。
 大学院に五研究科、大学は経済学部・外国語学部・経営学部・法学部・文化学部の五学部九学科そして短大二学科を併設しております。
 事務局は、運営事業オフィス、学術情報オフィス、そして学生支援オフィスとなり、それぞれの委員会を所管しております。
 三、事務組織改編について
 始めに申しあげましたが、SPS「Student Personnel Service」については、PersonnelをPersonalと表現されている方がおりますが、Personalは個人で、Personnelは構成員のことです。いろいろな資料では、厚生補導「Student Personnel Service」のことを「学生という大学の構成員のためのサービス」あるいは「学生を大学の構成とするための援助」と訳しているようです。
 また、厚生補導とは、「学生が学生となるために、もし障害があれば除去し、好ましい条件を整えること」ということで、学生をあくまでも補助し導くことのようです。
 この内容については、文部科学省(旧文部省)発刊の学生部ハンドブックに詳しく説明されておりますので、ご確認願います。
 そのような観点から、私は、学生をパーソネル(構成員)という表現をもう一歩踏み込んで、学生をパートナーとして一緒に協力してキャンパスライフを有意義に送っていただくために、「Student Partner Service」と表現させていただきました。
 本学では指導という表現や部署(部屋)の名称の使用を廃止し、相談とか相談室という表現を意識的に使っております。
 本学は厚生補導に対応するためのサービス・支援体制の議論を重ねていたところ、それぞれの課で対応している業務を「学生中心の大学づくり」をするためには、全学的な組織の構築が必要ではないかとの、結論に達しました。
 四、学生サービスの範囲について
 さて、大学設置基準第四二条(厚生補導の組織)には、「大学は学生の厚生補導を行うために、専任の職員を置く…」となっております。「厚生補導を行うために…」となっておりますが、厚生補導の範囲について、文部科学省の学生部ハンドブックでは、次のように示されています。
 @ 入学に関するサービス、A 新入生のオリエンテーション、B 修学関係(時間割・試験・成績等)、C 学生自治活動、D 経済的支援・奨学金・アルバイト、E 就職斡旋・相談、F 学生記録簿の保管・管理、G カウンセリングサービス
 以上の内容が厚生補導となっており、私たちが行う業務は非常に広範囲になっています。
 しかし、厚生補導は、学生関係の内容が重視されて、教務・就職関係業務はどちらかというと、厚生補導の範囲から除かれていました。旧国立大学及び旧文部省の研修会では、厚生補導研修会という名称で開催されておりましたが、五年ほど前から学生指導研修会に変更になりました。
 厚生補導の業務八項目のうち、これを本学の旧組織に当てはめてみますと、就職部・入試部・学生部・教務部の四つのブロックに分かれます。
 入学試験業務は、広報及び高校訪問を含めますと、在学生の対応とは少し異なっていますが、カリキュラムや授業そして成績あるいは経済的支援となるとその説明・対応は学生部や教務部の所管となるわけです。
 さて、なぜこのような改編を行ったかといいますと、平成十二年六月十四日付けの『大学における学生生活の充実方策について〜学生の立場に立った大学づくりを目指して〜』という報告書を当時の文部省から発行されました。
 いわゆる広中レポートと言われるものですが、その内容について簡単に申しあげますと、これからは全入時代を迎え多様な学生が入学してきますので、その対応についてそれぞれの大学が検討し、取り組む必要があると今から八年前に提言されました。
 本学も受験生の激減に伴い全入に近く、偏差値にも影響が出始めており、このままでは学生がひとりぼっちになっていくのではと心配をしております。これまでの大学の学生指導・支援体制は「大学中心」でありましたが、これからは「学生中心」へ変わっていかなくてはならないということです。
 そこで学内に「学生の立場に立った大学づくりを目指すこと」を目的に、事務局組織問題検討プロジェクトを設置し、その対応の検討をはじめました。したがって、プロジェクトの設置主旨は明確であり、二〇〇一年の九月にプロジェクトの方針がまとまりました。しかし、全学的な説明会やシミュレーションには多くの時間を費やし教職員の理解を得て、事務室の工事等を終えて二〇〇二年の九月に新事務局体制がスタートしました。
 本来ですと教員組織についても「学生中心」の教育体制を図らなければなりませんが、皆さんも経験をされていると思いますが、教授会で意見集約をすることは時間がかかることから、とりあえず事務組織だけ先にスタートすることになりました。
 また、教学組織、意思決定機関及び各委員会組織については、現在も検討を続けておりますが、なかなか結論がつかず、継続審議が続いております。教育改革やカリキュラム改革を盛んにしておりますが、真の「教育改革」を行うよう事務局からも積極的な提案をしているところです。
 五、オフィス紹介
 このような改革を行った結果、オフィスの横幅が長くなりました。
 四〇人が仕事をしている事務室をご紹介します。横の広さは約五〇メートルで、私はその事務室を一日何回も往復しております。
 次に、事務室のカウンターは低く職員も学生も椅子に座って相談しております。椅子に座ることにより落ち着いてゆっくり相談ができると好評です。また、ワンストップサービスということですので、担当者が分からない場合には、専門性を持っている職員に来てもらって、そのカウンターで説明しています。したがって、学生を移動させるのではなくは職員が移動し学生対応するというのが原則です。日常的な相談は、オフィス内になんでも相談コーナーを設け相談しており、精神的な悩みや専門的な相談があった場合には、学生支援オフィスとは別に学生相談室を設置し、学生相談室で対応することにしています。
 六、組織改編
 旧組織では、教務課、学生課、総務課、図書課等一三課あり、事務室もそれぞれ独立しており一三の部屋に分かれ、その他にセンターや指導室があり約二〇部屋に分散していたと思います。
 学生は、事務室に用件がある学生が来た場合、その事務室で対応ができないときには、担当の事務室へ行ってくださいと指示しておりました。担当の事務室でも解決しない場合には、さらに隣の事務室へ行って聞いてくださいと指示していました。いわゆる、「たらい回し現象」です。
 多様な学生が入学してきている現状では、このような「たらい回し」は目的を達成しない学生もおり大学として改善しなければなりません。そこで本学では、「ワンストップサービス」で対応することを検討し、改革の主旨とすることにしました。一三課の事務室を四つのオフィスにまとめてはどうだろうかということになりました。(つづく)

 

 

 

 

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