Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成19年6月 第2276号(6月13日)

外国人学生の受入促進など "イノベーション25"を閣議決定

政府は、このたび、「イノベーション25」を閣議決定した。イノベーション25とは、安倍政権の所信表明演説に盛り込まれた公約の一つであり、二〇二五年までを視野に入れた成長に貢献するイノベーションの創造のための長期的戦略指針。政府として重点的に進めるため、イノベーション担当大臣を設置して高市早苗内閣府特命担当大臣を充て、内閣府に「イノベーション25特命室」を設置した。同指針は六章からなり、第五章「イノベーション立国」に向けた政策ロードマップの「大学改革」の概要を掲載する。

 大学改革
 大学はイノベーションを先導する「知」の源泉であり、既に世界の一流大学は国際的な人材獲得競争、国際的な大学間連携やグローバル企業との産学連携を進めており、多様な経歴を持った研究者や学生の競争・連携拠点としてダイナミックに変革を遂げており、我が国の大学も、このような競争に巻き込まれていることを認識する必要がある。
 したがって、我が国の大学が世界に開かれ、多くの優秀な外国人学生が学び、切磋琢磨する環境を整えることで、新たな活力を創造する場として再生し、活力ある多様な人材を多く生み出す拠点となるべきである。また、より多くの学生が海外の大学で学び、「異」と触れ合う機会を得ることで、広い視野や知識を身に付け、国際的な人的ネットワークを構築する機会を提供するべきである。
 また、本来の役割として、幅広い教養の厚みに裏打ちされた知性あふれる専門家・社会人の育成、独創的・先端的な研究の推進及び社会の発展への寄与が経済成長およびイノベーション創造に貢献する。
 このような考え方の下、以下の取組を促進する。

@大学の研究力・教育力の強化
研究と教育両面にわたる国際競争力の強化

 国際的にも魅力のある大学院を構築、信頼される学部教育を実現し、国際競争力を高めることが重要である。このため教育研究の基盤を支える基盤的資金は確実に措置しつつ、以下の取組を促進する。
 ▽研究と教育の両面の国際競争力の強化を通じた世界的な拠点を形成する取組、▽様々な分野で広く活躍する高度な人材を養成する大学院の優れた組織的・体系的な教育の取組、▽若手研究者の自立促進や女性研究者のための環境整備、日本人研究者の「異」との交流等を促進し、イノベーションの担い手となる創造的な人材の育成、▽学部段階の特色・個性ある教育実践の取組、▽教育・研究指導の強化と厳格な成績評価の実施、授業の改善を図るための教員の組織的な研修や学生による授業評価の推進等、教育内容及び学位の質を保証する仕組みの検討、▽大学の施設環境を国際的な水準の魅力向上の整備。

文系・理系区分の見直し
 特定の学問分野にとらわれない幅広い知見や経験を身に付け、特に、科学技術に明るい経営者や、市場のニーズがわかる経営的なセンスを身に付けた研究者・技術者の輩出は、社会がイノベーティブであり続けるために重要な要素である。
 高校・大学における履修科目や就職等卒業後の進路の選択の幅を狭めないよう、以下の取組を促進する。
 ▽文系・理系の区分にとらわれず、募集単位の大くくり化等、受験生に幅広い学習を促す入学者選抜の取組、▽主たる専門以外の分野を体系的に学べる複数専攻制度の導入や、教養教育を重視した学部教育の質の充実等の取組、▽文系・理系の枠を越え、幅広い知識と専門性を兼ね備え、イノベーションの創出に寄与しうる人材を育成するため、複数の学問分野の融合による教育の推進。

意欲・能力の高い学生を選抜する大学入試の改善
 受験生の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に判定するきめ細やかな入学者選抜等の改善の視点に立ち、以下の取組を促進する。
 ▽意欲・能力の高い理数系学生を選抜する入試方法開発および実践、これらの学生の才能を開花させるカリキュラム開発や実践・早期の研究室配属・学会参加等の取組の促進、▽AO入試のさらなる活用に向け、受験者や保護者、企業のニーズを調査・解析。また、AO入試で入学する学生の質を確保する観点からの、在学中や卒業後の追跡調査及び分析。

A世界に開かれた大学づくり
海外の大学の学部や大学院との単位互換の促進

 交換留学を抜本的に拡充する観点から、海外の大学の学部や大学院との単位互換を促進する。

複数学位制(ダブル・ディグリー)の拡大等、国際的な大学間連携によるコンソーシアム形成の促進
 国際的な相互連携プログラムを策定し以下の取組を行う大学の活動を促進する。
 ▽海外の有力大学等との複数学位制の拡大、▽大学間交流協定等に基づく学生・教職員等の組織的な交流、▽我が国の大学等における英語による体系的な教育プログラムの提供(英語だけでも卒業に必要な教科を履修し、単位を取得できるような取組の促進)、▽日本人学生の留学に対する支援、▽我が国の大学等における九月入学。

教授・准教授の流動性向上
 教授・准教授の流動性を向上し活力ある研究環境を形成する観点から、任期制やテニュアトラック制度の広範な定着に努める。

海外から優秀な人材を受け入れるための支援
 我が国の大学に海外の優秀な人材を受け入れる環境を整える観点から、以下の取組を促進する。
 ▽教授・准教授の流動性を向上し、世界トップレベルの教員の採用を促進し、来日した外国人研究者が円滑に日本に定着するために必要な支援(外国人の採用比率を二〇一一年までに現行の二倍にする)、▽優秀な留学生を対象とした、産学連携による専門的な教育プログラム、ビジネスにも対応する高度な日本語研修、日本企業文化を理解するためのビジネス研修、日本企業へのインターンシップ、日本企業への就労支援等「アジア人財資金構想」をはじめとした関連施策の推進、▽生活者としての外国人に対する支援、▽外国人の勤務先に一定の要件を設ける等の措置も講じた上で、在留期間を五年程度に引き上げ、専門的・技術的分野の高度人材の積極的な受入れを促進。

優れた学生に国籍に関係なくフェローシップを支給
 大学院の真の国際化を推進する観点から、言語面での配慮を含めて、自大学出身者を優遇することのない国内外に公正に開かれた入学者選抜の実施の促進を検討し、優れた学生には国籍に関係なくフェローシップ等を支給することにより優れた頭脳を世界から集めるための取組を促進する。

B地域の大学等を活用した新たなチャレンジにつながる生涯学習システムの構築
 各々が生きがいを感じつつ自らの適性に応じて活動する場合でも、新たな知識を補充することにより、さらにチャレンジの可能性を広げる「学び直し」のニーズに対応した生涯学習システムの構築および地域の人材養成のために地域の大学等の教育力を生かす観点から、以下の取組を促進する。
 ▽生涯学習関連施設、大学・高等専門学校・専修学校と地域の産業界等関係者が連携し、社会人等が地域で実践的な学び直しができる実践的教育プログラム等の提供による機会の充実、▽地域の大学、高等専門学校や専門高校と産業界の連携により、学校の有する設備や教員を活用し、企業のベテラン技術者等の協力の下、地域や中小企業のニーズに応じた講義と実習を実施することにより、中小企業の若手技術者等地域産業を担う人材の育成・活用支援、▽地域の大学が協同して行う大学等の教育や地域貢献、地域ニーズに対応した人材育成。

Page Top