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平成19年6月 第2276号(6月13日)

公財政支出・寄附促進税制・研究費支援等の拡充求める
  私大団連 白井副会長・国大協会 小宮山会長代行が意見発表 

高等教育の多様な発展・地域の活性化に私大の役割強調

日本私立大学団体連合会(安西祐一郎会長)は、去る六月四日、自由民主党本部で開かれた文部科学部会・文教制度調査会合同会議の第二回大学・大学院教育小委員会(委員長=小坂憲次前文科大臣)における関係団体からのヒアリングに白井克彦同連合会副会長が臨んだ。同小委では、白井副会長のほか国立大学協会の小宮山 宏会長代行の二人が改正教育基本法の理念に沿った高等教育政策の在り方について、それぞれの役割や国費負担及び税制、地域振興への貢献、科学技術創造立国推進などの意見を述べ、理解を求めた。

 はじめに、日本私立大学団体連合会と国立大学協会との連名による「教育基本法の理念実現と高等教育の多様な発展に向けたお願い」として、高等教育全体に関わる次の三項目への理解を求め、白井氏が意見発表した。
 ▽公財政支出のGDP比率(〇・五%)を国際水準(一%)へ拡大
 新しい教育基本法の理念実現と地域振興における大学の重要性を考慮して、国公私立大学に対する財政支援を抜本的に拡充すべきである。そのため国内総生産(GDP)に対する高等教育への公財政支出比率の〇・五%を欧米諸国並みの約一・〇%の国際水準とすべく最大限の努力が必要である。
 ▽寄附促進税制の拡大と教育費の負担軽減のための定額減税実現
 米国と同様、個人からの寄附金にかかる所得控除限度額の上限(所得の四〇%)を五〇%まで拡大し、上限を超えた場合に五年間を限度に繰り越して控除できる繰越控除制度を実現するとともに、所得控除と税額控除のいずれかを選択できる制度を創設するなど、寄附金にかかる税制上の優遇措置を抜本的に拡充強化し、日本に寄附文化を根付かせることが重要である。さらに、高等教育機関に在籍する学生の教育費について、所要の教育費(学費)を負担者の所得にかかわらず、一定額を税額から控除する制度を創設し、教育費の負担を軽減することによって少子化対策の充実を図ることが可能となる。
 ▽研究費にかかる支援(科学研究費補助金等)のさらなる拡充
 科研費をはじめとする競争的資金の拡充を図り、すべての競争的資金における間接経費三〇%の措置を早期に実現する。さらに人文・社会科学分野及び若手研究者の研究の優遇措置として、「基盤研究C」や「若手研究B」などの間接経費は例えば五〇%にするなど、研究基盤の強化に向けた支援の充実を図る。
 次に、白井氏は同連合会からの要望として「高等教育の多様な発展と国費負担のあり方」を説明した。そのポイントは次のとおり。
 一、高等教育の多様な発展と私立大学の役割
 (1)私立大学の多様で特色ある教育は高等教育の多様な発展に不可欠である。
 (2)地域振興と活性化等にとって私立大学は不可欠な存在である。
 二、国公私立大学が共存した高等教育の再構築
 (1)国公私立大学を俯瞰した大学改革の姿を描き実践していく。
 (2)各大学は特色や個性の明確化による多様化の推進と機能別分化を指向する。
 三、高等教育に対する国費負担及び税制のあり方
 (1)高等教育費の国民負担は国家未来の社会的コストである。
 (2)公財政支出のGDP比率(〇・五%)を国際水準(一%)へ。
 (3)教育振興基本計画の中に高等教育への投資目標額を明記する。
 (4)教育費の税額控除など税制を改善する。
 四、適正な競争環境の実現に向けた私学助成
 (1)国立大学の果たすべき役割と国費投入の有意性と優位性を再検証する。
 (2)「教育」にかかる経費の国費負担は国公私立大学とも同条件とすべき。
 (3)高等教育における国費負担のあり方に関し、「学生一人当たりの経費を基本とする」、「私学振興助成法の趣旨による」、「現在の国の財源の範囲で配分を考える」といったそれぞれの場合の私学助成への考慮を。
 五、科学技術創造立国推進に向けた私立大学の重要性
 (1)多様な科学技術人材の育成と創造的な研究成果を生むには「民」の活力が必要である。
 (2)地域活性化に貢献する私立大学の研究活動は国全体の科学技術力強化につながる。
 (3)私立大学の最先端研究促進には世界トップレベルの研究拠点の支援が必要である。
 (4)改正教育基本法と第三期科学技術基本計画を踏まえた私立大学への重点支援が不可欠である。
 引き続き、国立大学協会の小宮山氏は、「国立大学の現状と課題」について、@国立大学は国力の源泉、A国際的競争力のある大学への改革、B競争力と資金投資は比例、C公財政支出の増額と高等教育機関に対する寄附の充実策、などへの理解を求め、最後に、「大学に競争と切磋琢磨は必要」として、人材育成のための教育改革という視点が第一義的であり、経済的効率性は第二義的であると説明した。
 白井、小宮山両氏の説明の後、各議員から、「寄附促進税制の拡大等が必要というが、学生への奨学金制度を抜本的に改革してはどうか」「東京大学等の民営化はどうなのか」「寄附金が不十分とのことだが、アメリカの大学等では世界の企業を回ってPRするなどして寄附を集めたりしている」「世界のトップになろうという気迫が足りないのではないか」「少子化の中で、地域の活性化に欠かせない多くの地方の大学の足腰を強くさせることも必要だ」など多様な意見が出された。
 これに対し、白井氏は、「多様な人材を育み、世界との競争に勝つような大学もなければならないが、そこには裾野の広がりも必要である」ことを訴えた。また小宮山氏は、「世界レベルの大学は必要であるが、それには安定した資金をいかに獲得し人材養成していくかにかかっている」などとの考えを述べた。
 今後とも我が国の高等教育の発展に向けた議論を重ねることが確認された。

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