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平成19年5月 第2272号(5月9日)

2025年目指すべき社会 イノベーション25戦略会議に向けまとめ

平成19年度科学研究費補助金(配分を受けた全私立大学分)

 科学技術政策研究所では、このたび、イノベーション25戦略会議の議論へ参考資料を提出することを目的として、二〇二五年に目指すべき社会の姿をとりまとめた。六つの分野に分けて検討がなされ、脳科学の進展や環境問題への国際的な貢献等が描かれた。六分野の概要は次のとおり。

 (1)生涯健康の時代
 超高齢化社会は、自らがより積極的に医療に関与することにより自分自身の健康を維持する、いわゆるセルフケア時代である。一方、医療技術は更なる発展を遂げ、難病や慢性疾患の多くは克服され、国民は充実した家庭生活を送るとともに、社会においても年齢や性を問わず、元気で生きがいのある生活を送っている。従って、二〇二五年の人々は、@元気に長生きで活動的に楽しく生活し、大病せず寿命を迎える、A日常生活において常時、個人が主体的に健康維持と疾病予防を行い、いざという時には病院で高度な医療を受けることができる。
 (2)生活インフラとしての情報環境―ユビキタス成熟社会―
 インターネットは、変化のスピードが増し、いかなる国・組織も他者との連携なしには何事もなしえず、政策の力点は環境整備型に移る。次の情報インフラ整備によって、生活シーンの中に多くのイノベーションを見ることができる。
 一、デジタル化価値インフラ:経済活動を電子ネットワークベースに完全移管する。安心して使える電子マネー、貨幣、株式の情報が流通する。
 二、デジタル化制度インフラ:法律や契約、ルールなどを電子的に記述し、それらのルール間の交渉を最大限自動化する。
 三、ユビキタス識別インフラ:場所や物品に唯一無二の識別子を付与し、組織や応用を超えたオープンな識別が可能になる。
 四、ユニバーサル操作インフラ:ユビキタス環境におけるサービスを誰もが利用できることを保障する。
 (3)脳科学の進展による生活者の活動支援
 脳神経科学・認知科学・医療・工学が融合した脳科学が進展し、働き方等は次のように変化する。
 一、健康・医療・介護の充実:脳神経等に関連した疾患の早期発見・予防・治療が可能になり、介護ロボット等の普及により、自立して社会で生きる体制が整う。
 二、教育・学習・日常生活の高度化:子どもの能力・個性や環境を考慮した学習ができるようになり、社会性や情緒の健全な発達を促すことができる。社会的な意志決定過程の支援システムにより、市民の意見が社会に反映されやすくなる。
 三、労働・安全・安心に関わるシステムの変革:機械を含めた労働システムが、不注意や疲労などの人の避けがたい性向を補完し、人と機械との協働環境が普及する。災害救助システムも整備が進み、アジア諸国を始め世界から日本の貢献が高く評価される。
 (4)安全で持続可能な都市
 省エネルギー、低環境負荷、高耐久、安全であるとともに、美しい景観、人口減少下でも活力がある都市生活の実現が必要である。
 一、コンパクトな都市:一〇〇年単位の人口減少を想定した市街地目標規模を設定した都市計画が行われ、土地やエネルギーが高効率で利用可能なコンパクト都市が実現する。
 二、環境にやさしい都市交通:公共交通と低環境負荷自動車及び道路インフラが高度に統合した新都市交通システムにより、渋滞緩和、高齢者の判断ミスによる事故も低減する。
 三、分散エネルギーシステム:小規模分散と大規模集中のエネルギーシステムが適材適所で融合する。また、廃熱有効利用や廃棄物リサイクルが進展し、都市への資源・エネルギー投入量が大幅に減少する。
 四、災害の少ない都市:災害への十分な事前評価と迅速的確な被災状況把握を通じて自身に対する備えが充実する。
 (5)闊達たる人生―職業選択、子育て、シニアライフの多様化
 子育て者やシニア、障害者、海外人材などを含むあらゆる人々が活き活きと働ける生活が実現している。
 一、ライフステージに応じた職業選択:就業形態の多様化や企業年金のポータブル化による転職の自由度が向上、ライフステージに応じた職業選択が可能となる。バリアフリーやユニバーサルデザイン化、自動翻訳などにより、障害者やシニア、子育て者が元気に仕事を続けることができる。
 二、子育て家族が社会から種々の便宜を享受:子育て者のライフコースが充実し、子どもの健全なる成長を地域で支え、どの地域でも安全に出産でき、安全システムの整備による体感治安の良い社会が実現する。子育て者の社会参加を容易にするため、キャリア継続を保障する制度や遠隔生涯教育システムが充実する。
 三、シニアが多様なセカンドライフを選択:シニアの他世代との連携や次世代への知の伝承を地域コミュニティで行い、シニアの経験知が有効に発揮できる地域の生活が実現する。
 (6)地球規模の環境問題の克服と世界との共生
 地球規模の危機を回避するために、地域で統合化された分散システムとして整備することが求められる。
 一、世界をリードする持続可能な社会:世界トップレベルの環境保全技術を有し、政府・企業・一般市民が共同して、二酸化炭素の削減、廃棄物処理問題等の改善に貢献している。
 二、世界のモデルとなる循環型社会:グリーン購入や社会的責任投資が当たり前になり、リサイクル技術の進展によって廃熱・水・ごみが再利用される循環型社会が構築する。
 三、世界との共生:環境浄化技術等を学ぶために、海外から研修者が来日し、帰国後には母国の環境経済を改革する。

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