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平成19年4月 第2270号(4月18日)

トラブル防止のルールなど提言 "消費者契約法"ヒアリング(1面の続き)

 1面に掲載した消費者契約法評価検討委員会のヒアリングにおける日本私立大学団体連合会の意見表明のうち、(2)消費者契約法に関連する最近の消費者トラブルの実情とその対応、(3)消費者トラブルの解決に資する取引ルール・規制のあり方は次のとおり。
 (2)消費者契約法に関連する最近の消費者トラブルの実情とその対応
 団体連合会としては、学納金の返還にかかる問題のほかには、在学契約にかかるトラブルについては、とくに承知していない。
 学納金の返還問題にかかる(1)(1面)について、個々の事案の判断については、入学辞退の意思表示の認定方法など、なお問題を残すところもあるものの、各私立大学では、今回の司法判断を尊重して、学納金徴収制度が受験生の大学選択の幅を狭めることのないよう、また不公正な結果にならないように、きめ細かな対応に努めることが必要であると考えている。
 すでに述べたように、多くの私立大学では、「入学試験にかかる授業料及び施設設備費など(入学金を除く)の取り扱いは、一般入試、推薦入試等いずれにおいても、納入期限は国立大学の後期日程入試の合否発表日以降に設定し、入試要項における表記等についても、文部科学省の通知(平成十五年五月十七日)の趣旨に十分留意して対処するものとする」とした文科省による「平成十五年度大学入学者選抜実施要項についての内容も踏まえ、すでに授業料及び施設設備費など(入学金を除く)の納入期限を国立大学の後期日程入試の合否発表日以降に設定し、上記のとおり、三月三十一日までに入学辞退の届出があればその返還に応じる体制をとっている。これは、最高裁判決にある「学生の大学選択に関する自由な意思決定を過度に制約し、その他学生の著しい不利益において大学が過大な利益を得ることになるような著しく合理性を欠くと認められるもの」ではないと思料する。
 (3)消費者トラブルの解決に資する取引ルール・規制のあり方
 @入学辞退の意思表示の確認方法
 最高裁判決は「入学辞退の申出が当該学生本人の確定的な意思に基づくもの」であれば、口頭によるものでも有効とする。しかし、入学辞退の申出にはさまざまなパターンが考えられ、どのようなケースが有効、あるいは無効とするかといった具体的な判断にまでは立ち入っていない。そこで、入学辞退の意思表示を確認する方法を的確にルール化しておくことは、入学辞退にかかるトラブル防止という観点からみると、大学側、受験生側の双方にメリットがあると思われることから、以下のような措置をとることが望ましいと考えられる。
 ●入学辞退にかかる申出先については、担当窓口の一本化、情報の一元化と判断の統一性を図ること。
 ●入学辞退の意思表示の方法については、最高裁では口頭で足りるとしているが、明確かつ画一的な方法によって確認することが必要であり、一次的には、入学辞退は大学所定の様式による書類によって申出るよう合格者に求めること。
 ●口頭での申出を受け付ける場合は、受験者氏名、受験番号、受験者生年月日、自宅電話番号を確認し、さらには、受信に際して新たに受付番号を付与して大学側が改めて連絡をとりその受付番号で照合するなど、申出をした者の本人確認を徹底すること。
 A国立大学の入学手続き期日設定の適正化の要請
 国立大学協会入試委員会がとりまとめた「国立大学の入学者選抜についての平成十九(二〇〇七)年度実施要領」では、追加合格者の決定を三月二十八日から開始し、すべての追加合格者について、大学が追加合格候補者に該当する受験生への入学の意志の確認を行う日の最終日を原則として三月三十一日として、入学の意志を表明した受験生については、当該大学がとくに指定した日(四月一日以降の日)」までに入学手続を完了させるとしている。また、三月下旬に欠員補充第二次募集を行い、その入学手続期日を「四月上旬までの間」に設定するとともに、欠員補充第二次募集出願者について、大学入試センター試験の受験者で、二月二十四日の時点で、いずれの国立大学にも合格していない者としている。
 このように、国立大学の追加合格者及び欠員補充第二次募集出願者の入学手続期日が実質的に四月以降に設定されていることにより、私立大学において、四月初旬の入学式をはじめとする重要な学事日程が設定されている時期に入学辞退者を生じることとなるとともに、欠員補充第二次募集出願者の募集対象を「いずれの国立大学にも合格していない者」としていることは、国私間の不公正な競争条件の一端を表わすものであり、早急に是正されるべきである。

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