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平成19年4月 第2269号(4月11日)

18年度 文部科学白書 私立学校の振興のために −下−

 文部科学省は、このたび、平成十八年度文部科学白書を公表した。これは、同省の施策を国民に紹介するために毎年刊行されているもの。また、特集部分と文教・科学技術施策全般の年次報告部分の二部構成でまとめられており、十八年度のテーマは、「教育再生への取組/文化芸術立国の再現」で、その中から、「第四章:私立学校の振興のために」を二回に分けて掲載する。

 また、社会人講師や補助教員などの活用に対する補助や幼稚園における預かり保育、子育て推進事業などの補助の充実も図っています。さらに、「授業料減免事業等支援特別経費」を措置し、保護者などの失職・倒産による家計急変や生活保護世帯を対象とした授業料減免措置に対する補助を行うこととしています。
 なお、各都道府県は、経常費助成費の配分に当たり、教育条件の整備状況などに応じた傾斜配分や特別補助の実施により、私立学校の経営努力を促しつつ、特色ある教育が推進されるよう配慮しています。
 (2)施設・設備等の整備に対する補助
 文部科学省では、私立高等学校などにおける校舎施設の機能をより高めることを目的として、@校内LAN、施設のバリアフリー化などの改造工事、A防災機能・安全機能強化のための施設整備、B環境へ配慮した施設作りと環境教育のための施設整備などに対する補助を行っています。平成十八年度は二〇億七八〇〇万円を計上しています。
 また、IT教育の充実を図るため、コンピュータ等のIT教育設備の購入に要する経費の一部を補助する「私立高等学校等IT教育設備整備推進事業」を実施しており、平成十八年度は一三億円を計上しています。
 (3)教員研修事業費等に対する補助
 私立学校における教育指導の充実を図るため、(財)日本私学教育研究所が、私立高等学校などの新任教員を対象に実施する初任者研修事業費と一〇年経験教員を対象に実施する経験者研修事業費などに要する経費の一部を補助しており、平成十八年度は五二九六万円を計上しています。
 3 私立学校施設高度化推進事業
 現在、我が国の多くの私立学校施設で老朽化が進み、建て替え期に差し掛かってきています。
 そのため、私立学校施設の高度化・近代化を計画的に推進し、教育研究条件の充実向上を図るため、日本私立学校振興・共済事業団から融資を受けて実施される学校施設の改築事業について、貸付金利に応じた利子助成金を(財)私学研修福祉会を通じて交付しています。具体的には、築三〇年以上の老朽校舎及び危険建物と認定された旧耐震基準の施設(昭和五十六年以前の建物)の改築工事が対象となります。
 また、平成十五年度からは、八年度以前に実施された学校施設整備事業についても、教育方法等の改善計画の円滑な遂行を支援するため、その金利負担の一部を利子助成の対象としており、合わせて一一億八九〇一万円を計上しています。
 4 私立専修学校に対する助成
 文部科学省では、専修学校がその柔軟な制度の下で、社会のニーズに対応した実践的な職業教育、専門的な技術教育等を行う教育機関として発展していくため、様々な施策を実施しています。
 専修学校における教育環境の充実を図るため、最新教育装置や情報処理関係設備の導入に要する経費の補助、教員研修に対する補助等の助成を行っています。また、意欲的に教育の向上に取り組む専修学校に対しては、社会が求める即戦力となる人材の育成や教育水準の高度化など、社会的要請の高い課題に対応するための教育方法などの研究開発や、多様な人材育成のためのキャリアアップ教育プログラムの開発を委託するなど、専修学校教育のより一層の振興を図っています。
 第三節:私立学校振興方策の充実
 1 日本私立学校振興・共済事業団の事業
 日本私立学校振興・共済事業団では、私立学校の教育の充実・向上と経営の安定、教職員の福利厚生を図るための振興・共済業務を総合的に行っています。
 私立学校振興のための施策として、文部科学省から私立大学等経常費補助金の交付を受けこれを私立大学等を設置している学校法人に交付しており、平成十八年度においては、二五七五億円を予定しています。
 さらに、私立学校の校地・校舎等の施設設備の整備等に必要な資金については、長期・低利の有利な条件で学校法人への貸付を実施しており、平成十八年度においては、総額六〇〇億円の貸付を計画しています。
 また、私立学校教職員のための共済制度として、@加入者とその家族の病気・けが・出産・死亡又は災害等に対して給付を行う短期給付事業、A加入者の退職・障害又は死亡に対して年金の給付を行う長期給付事業、B病気の予防、病院や宿泊施設の運営、資金の貸付け、貯金の受入れ等を行う福祉事業を実施しています。
 2 私立学校に関する税制
 私立学校教育の振興等の観点から、次のような措置を含む種々の税制上の特例措置が講じられています。
 私立学校を設置する学校法人については、法人税・事業税は収益事業から生ずる所得に対してのみ課税され、法人税は軽減税率が適用されています。また、学校法人が直接保育又は教育の用に供する不動産に関しては不動産取得税・固定資産税が非課税とされています。
 他方、特定公益増進法人の証明を受けた学校法人に対する寄附金については、個人の場合には寄附金控除、企業等法人の場合には一般の寄附金とは別枠で損金参入が認められています。
 また、一定の要件を満たす学校法人に対し、相続財産をその申告期限までに寄附した場合には、その相続財産に係る相続税は非課税とされています。
 各私立学校は、これらの税制上の特例措置を積極的に活用して経営基盤強化の一助とし、魅力ある教育研究が進められています。
 3 学校法人に対する経営改善支援
 近年における少子化などの影響もあり、学校法人をめぐる経営環境は全体として大変厳しい状況にあります。平成十八年度に入学定員を満たしていない私立学校が、大学で二二二校(四〇・四%)、短期大学で一九三校(五一・七%)を占めています。各学校法人においては、新しい時代の要請に応じた学部・学科の見直しや特色ある教育活動の展開はもとより、経費の削減など経営の効率化を図り経営基盤の安定のための努力を積極的に行っていくことが求められています。
 文部科学省としては、学校法人の経営改善努力を支援するため、平成十五年に「学校法人経営指導室」を設けるなど事務体制の充実を図るとともに、学校法人運営調査委員制度等を活用した経営に関する指導・助言を行っており、日本私立学校振興・共済事業団では、経営分析・経営相談体制の整備を図ってきました。
 さらに、平成十七年五月には「私学の自主性の尊重」と「学生の就学機会の確保」を柱とする「経営困難な学校法人への対応方針について」を取りまとめ、公表したところです。そのポイントは、次のとおりです。
 ◆学校法人は、自らの責任で経営基盤の強化を図る義務のあることの再確認
 ◆文部科学省は、経営分析及び指導・助言などを通じ、学校法人の改善努力を支援(状況により学校法人に対し経営改善計画の作成依頼)
 ◆学校法人が学校の運営を存続できなくなった場合、在学生の就学機会の確保(転学支援を含む)を最優先
 引き続き、日本私立学校振興・共済事業団とも連携しつつ、学校法人の経営改善や再生等に向けた具体的な方策の検討を行うなど、学校法人の経営改善支援を進めていきます。(おわり)

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