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平成19年4月 第2268号(4月4日)

18年度 文部科学白書 私立学校の振興のために −上−

  文部科学省は、このたび、平成十八年度文部科学白書を公表した。この白書は、同省全体の施策を広く国民に紹介することを目的に毎年刊行されているもの。また、特集部分と文教・科学技術施策全般の年次報告部分の二部構成でまとめられており、十八年度のテーマは、「教育再生への取組/文化芸術立国の再現」となっている。同白書の中から、「第四章:私立学校の振興のために」を二回に分けて掲載する。

  第一節:重要な役割を果たす私立学校
  1 私立学校の果たす役割
  私立学校に在学する学生生徒などの割合は、大学・短大で約七五%、専修学校・各種学校で約九五%、高等学校で約三〇%、幼稚園で約八〇%となっており、私立学校は我が国の学校教育の発展に大きく貢献しています。また、近年ますます国際化・高度情報化する社会の中で、各私立学校には、多様化する国民のニーズ(需要)に応じた特色ある教育研究の推進が求められており、それぞれが建学の精神に基づく個性豊かな活動を積極的に展開しています。このように、私立学校は、我が国の学校教育の発展にとって、質・量両面にわたり重要な役割を果たしています。
  このため、文部科学省は、私立学校の振興を重要な政策課題として位置づけ、その教育研究条件の維持向上と在学する学生生徒などの修学上の経済的負担の軽減を図るとともに、経営の健全性を高めるため、次の施策をはじめとする振興方策を講じ、その一層の充実に努めています。
  @経常費補助を中心とする私学助成事業
  A日本私立学校振興・共済事業団における貸付事業
  B税制上の特例措置
  C学校法人の経営改善支援
  各私立学校においても、それぞれの自助努力により、経営基盤の維持・強化を進め、教育研究内容や財務状況に関する情報公開を積極的に行いつつ、国民の要請にこたえる個性的で魅力あふれる学校づくりを進めることが期待されています。
  このようなことも踏まえ、学校法人が近年の急激な社会状況の変化に適切に対応し、様々な課題に対して主体的、機動的に対応していくため、平成十七年四月一日から改正私立学校法が施行され、@学校法人における管理運営制度の改善、A財務情報の公開、B私立学校審議会の構成の見直しが行われました。
  第二節:私立学校に対する助成
  1 私立大学等に対する助成
  (1)経常費に対する補助
  文部科学省は、私立の大学、短期大学、高等専門学校における教育研究に必要な経常的経費(教職員の給与費、教育研究経費など)について補助を行っています。この補助には、大きく分けて一般補助、特別補助があります。
  一般補助は、教職員の給与費や基盤的な教育研究経費、教職員の所定福利費、厚生補導費などを対象としており、平成十八年度からは、教職員の雇用保険料などを新たに対象としました。また、配分に当たっては、(1)学生定員の管理状況、(2)専任教員一人当たりの学生数、(3)学生納付金の教育研究経費への還元状況などの客観的な指標に基づき、教育研究条件の整備状況に応じて配分額を調整し、効果的・効率的な配分を行っています。
  特別補助には、「特別補助」と「私立大学教育研究高度化推進特別補助」があります。このうち、「特別補助」は社会人の受入れや学習機会の多様化に対応する経費など、社会的要請の強い特色ある教育研究を支援するものです。平成十八年度からは、経済的に修学困難な学生に対し授業料減免などの奨学事業を実施する学校に対して補助を行う「授業料減免事業等支援経費」を創設しました。また、「私立大学教育研究高度化推進特別補助」は、競争的環境の下で世界水準の優れた私立大学づくりを目指す観点から十四年度に創設されました。
  平成十八年度においても、引き続き私立大学における教育・学術研究を促進するため、前年度に比べ二〇億円増額の三三一二億五〇〇〇万円の予算を計上しています。
  (2)施設・設備等の整備に対する補助
  文部科学省では、私立大学等に対する施設・設備等の整備について、次のような補助を行っています。
  @研究基盤の整備と研究機能の高度化を推進するため、優れた研究プロジェクトに対する重点的かつ総合的な補助を行う「私立大学学術研究高度化推進事業」
  A高度情報化に対応したマルチメディア施設や学内LAN(学内ネットワーク)、パソコンなどの情報通信環境を整備するために必要な補助
  B校舎などの耐震補強工事、アスベスト対策工事、バリアフリー化工事などに対する補助
  平成十八年度予算では、合わせて約一七九億一一〇〇万円を計上しています。このうち、@、Aに関する補助金の配分に当たっては、外部の学識経験者から構成される委員会において審査・選定を行っています。
  2 私立高等学校等に対する助成
  (1)経常費助成費に対する補助
  私立の高等学校、中等教育学校、中学校、小学校、幼稚園、特殊教育諸学校の運営のための経常的経費については都道府県が助成しています。初等中等教育の全国的水準の維持向上のため、地方交付税措置が講じられているほか、文部科学省では、都道府県が行う経常的経費の助成(経常費助成費)などに対して国庫補助を行っています。国庫補助金の配分に当たっては、都道府県の助成水準に応じて配分し、都道府県における積極的な取組を促すよう配慮しています。
  十八年度には、前年度予算額に対し五億円増額の一〇三八億五〇〇〇万円の国庫補助金を措置するとともに、地方交付税についても充実が図られています。
  国庫補助金ついては、コンピュータ整備等のIT教育環境の充実、体験学習や少人数教育等きめ細やかな学習指導の推進等豊かな心と確かな学力を身に付ける教育の推進に必要な経費に対する補助を行うことにより、私立高等学校等における教育条件の向上などを図っています。(つづく)


  マルチメディア:デジタル化された映像・音声・文字データなどを組み合わせた複合メディアのこと
  バリアフリー化:障害のある人が社会生活をしていく上で障壁となるものを除去するということ。

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