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平成19年3月 第2267号(3月28日)

文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直し

 第六期文化審議会(阿刀田 高会長)は去る二月二日、「文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直しについて」伊吹文科相に答申した。同答申は、文化芸術振興の今日的意義や第一次基本方針策定後の諸情勢の変化等を踏まえ、第一次基本方針を見直し、今後おおむね五年間を見通して策定したもの。答申のポイントは次のとおり。

 一、文化芸術の振興の意義
 1、「文化力」は国の力
 文化芸術の持つ、人々を引き付ける魅力や社会に与える影響力(「文化力」)が国の力であることが世界的にも認識されている。
 2、文化芸術と経済は密接に関連
 文化芸術が経済活動において新たな需要や高い付加価値を生み出す源泉ともなっており、両者は密接に関連しあうと考えられるようになり、これらが「文化芸術立国」を目指すとしている。
 二、文化芸術の振興に当たっての基本的視点
 1、諸情勢の変化
 国内―民間と行政の役割分担の見直しや規制緩和などにより新たな分野への民間の進出が可能となり、企業のメセナ活動も多様な広がりを見せている。
 公立文化施設に対しては、指定管理者制度の導入により、民間の新たな発想や方法による効果的かつ効率的な運営が期待される一方で、地方では、過疎化や少子高齢化の進展等により、安定的・継続的な文化芸術活動が困難になることや地域に根ざした文化芸術の継承の危機が懸念されている。
 国際―地球規模化の進展に伴い、情報通信技術の発展と普及は、文化的表現の多様性条約の採択、国境を越えた対話や交流を活発化させる。
 2、基本的視点
 @文化力の時代を拓く=○伝統文化から現代文化まで、多様な文化芸術を振興し、文化力を高め、心豊かで活力にあふれた社会を実現していくことが必要である。○国際文化交流の推進により、わが国への理解を促進するとともに、文化芸術を通じて世界に貢献する。○文化芸術の特質を踏まえ、長期的かつ継続的な視点に立った施策を展開する。
 A文化力で地域から日本を元気にする=○地域文化の豊かさが日本の文化、日本の魅力を高め、多くの人々を元気にする力となる。○国民が全国のどこでも様々な形での文化芸術に触れ、更に豊かな文化芸術を創造できるようにする。○団塊の世代の人々が文化芸術を享受し、地域の文化芸術活動に参加していくための環境を整備していく。
 B国、地方、民間が相互に連携して文化芸術を支える=○国として保護・継承し、創造を促進していくべきものに対し、積極的に支援することが必要。必要な法制上、財政上、税制上の措置等により、文化芸術活動の発展を支える環境づくりを進める。○関係府省間の連携・協力を一層推進するとともに、個人、企業、団体、地方公共団体、国などが相互に連携し、社会全体で文化芸術の振興を図る。
 三、文化芸術の振興に当たって重点的に取り組むべき事項
 1、日本の文化芸術の継承、発展、創造を担う人材の育成=○関係機関が連携・協力を図り、専門的人材の計画的・系統的な育成を促進する。○文化芸術活動を支える人材(アートマネジメント担当者、舞台技術者等)を育成する。○無形文化財等の継承者養成のため経済的に自立できる環境の整備を支援、充実を図る。○質の高い文化ボランティア活動を活発にするための環境整備を図る。
 2、日本文化の発信及び国際文化交流の推進=○アジアをはじめとする海外の文化芸術振興に資するよう、国際文化交流の施策を検討していく。○「ジャパン・クール」として注目を集めるメディア芸術などの新しい文化芸術の国際的な拠点を形成する。○積極的に文化財保護の国際協力を推進する。
 3、文化芸術活動の戦略的支援=○水準の高い活動への重点的支援と地域性等にも配慮した幅広く多様な支援のバランスを図る。○各種助成機関等の適切な役割分担を図るとともに、再助成制度の有効性も検討する必要がある。
 4、地域文化の振興=○居住する地域にかかわらず、等しく文化芸術の鑑賞・参加が可能となるよう、拠点づくりなどの活動を支援する。○地域の高等教育機関は、地域文化の振興に貢献することが望まれる。○地域の文化力を地域経済や観光等はもとより広くまちづくりに生かす。
 5、子どもの文化芸術活動の充実=○子どもの豊かな心や感性・創造性をはぐくむため、子どもたちが身近に伝統文化や現代の文化芸術に触れる機会の充実が必要である。○学校の文化芸術活動を地域ぐるみで支援する仕組みを構築する。○子どもたちの国際的な文化交流に一層力を注ぐ必要がある。
 6、文化財の保存及び活用の充実=○文化財の実効性のある保存及び活用の充実を図る。○地域社会が文化財を国民共通の財産として親しみ、守っていく機運の醸成が必要である。○ユネスコ世界遺産への推薦、登録を推進していくことは重要である。

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