Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成19年2月 第2264号(2月28日)

大学院の教育改革を調査 改正設置基準への対応状況も

 文部科学省は、このほど、昨年十一月に大学院を設置する国公私立大学(五七六校、回答率一〇〇%)に対して行った、大学院教育振興施策要綱に関する取り組みについての調査結果を取りまとめた。概要は次のとおりである。

 大学院教育振興施策要綱では、各大学院の教育改革に関する取り組みについて調査・公表することとしている。また、昨年三月に改正された大学院設置基準がこの四月に施行されることから、今回は、それに向けた各大学院の準備状況についても調査している。
 (1)博士の学位授与の状況
 多くの研究科において、学位の年間複数回申請の仕組みの整備(六四・五%)、複数の指導教員による論文指導体制の構築(六〇・五%)、留学生に英語等による論文作成を認める(五九・七%)、中間発表の実施(五八・六%)などの取り組みを実施しており、各大学院が積極的に学位授与の円滑化に取り組んでいることが示された。
 一方で、今回初めて、標準修業年限内に学位が授与された割合を調査したところ、平成十七年度の学位授与率は四二・七%となっており、保健、農学、工学分野では五〇%を超えているが、人文科学、社会科学分野は二〇%以下となっており、分野により授与率が大きく異なっている。
 (2)補完的な教育プログラムの策定状況
 平成十八年度の大学院入学者のうち、他の大学等出身者の割合は、修士課程二九・九%、五年一貫制の博士課程六一・三%、博士課程(後期)三〇・七%、医歯獣医学の博士課程四八・一%、専門職学位課程七五・七%、他の分野を学んでいた者の割合は、修士課程一二・八%、五年一貫制の博士課程一九・五%、博士課程九・三%、医歯獣医学の博士課程一二・六%、専門職学位課程三五・八%となっている。また、三五・五%の大学においては、これらの多様な学修歴を有する学生に対して、当該課程の履修に必要な学修を補完する教育の提供を既に行っており、二四・九%の大学が補完的な教育プログラムの策定について検討している。
 (3)大学院学生に対する経済的支援の状況
 多くの大学が、内部資金によるティーチングアシスタント(TA)やリサーチアシスタント(RA)の雇用(六一・〇%)や大学独自の奨学金制度の実施(五二・五%)などの経済的支援を行っており、九五・三%の大学が、何らかの支援の実施または検討を行っている。また、各大学において、TA・RAを雇用する際の単価設定について、非常勤職員等の給与の支給基準を準用するなどの一律の単価設定ではなく、柔軟な設定となるような工夫も行われている。
 (4)リカレント教育の実施状況
 平成十八年度の大学院入学者のうち、社会人の割合は、修士課程一〇・五%、博士課程三〇・七%、専門職学位課程三九・八%となっている。また、各大学院においては、リカレント教育に積極的に取り組んでおり、二七・三%の大学において主に社会人を対象とした専攻など学位取得を目的としたコースを設置するとともに、一一・〇%の大学において学位以外の修了証を授与する教育プログラムを実施している。
 (5)専門分野ごとの自己点検・評価の実施状況
 各大学院における専門分野ごとの自己点検・評価について、大学院教育振興施策要綱の策定(平成十八年三月三十日)後の実施状況を調査したところ、全大学のうち、四〇・四%が既にすべての研究科または専攻において専門分野ごとの自己点検・評価を実施、九・〇%が一部において実施、四四・〇%が検討中と回答している。
 (6)外国人学生、教員の受入状況
 平成十八年度の大学院入学者のうち、外国人学生の割合は一七・一%となっており、六五・二%の大学において外国人学生の受け入れに関する取り組みを実施している。また、同じく十八年度の外国人教員の割合は一〇・三%となっており、三二・二%の大学において外国人教員の受け入れに関する取り組みを実施している。
 (7)大学院設置基準の改正への対応状況
 平成十九年四月一日の改正大学院設置基準の施行に向けての準備状況について調査を実施したところ、教育研究上の目的の明確化については二八・〇%の大学において検討が終了しており、六二・六%の大学において検討を実施中であること、また、修士課程及び博士課程(前期)の修了要件の変更については三三・二%の大学において検討が終了(うち、八・八%の大学において改正を予定)しており、四七・二%の大学において検討を実施中であることが明らかになった。

Page Top