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平成19年2月 第2262号(2月14日)

“温暖化起きている”と断定 IPCC第一作業部会報告書

 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第一作業部会第一〇回会合(一月二十九日〜二月一日、フランス・パリ)において、IPCC第四次評価報告書第一作業部会報告書が承認、公表された。同報告書では、気候システムに温暖化は起こっていると断定するとともに、人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因であると、ほぼ断定した。主な結論は次の通り。

 IPCCは、人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的に、一九八八年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織である。
 気候システム等の自然科学的根拠の評価を行う第一作業部会では、過去三年間にわたる取りまとめ作業の仕上げとなるこのたびの議論により、地球温暖化の実態と今後の見通しについての、自然科学的根拠に基づく最新の知見を取りまとめた。今後、同報告書は、「気候変動に関する国際連合枠組条約」をはじめとする、地球温暖化対策のための様々な議論に科学的根拠を与える重要な資料になると評価されている。
 同報告書では、まず、気候システムに温暖化が起こっていると断定するとともに、人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因とほぼ断定し、第三次評価報告書の「可能性が高い」より踏み込んだ表現となった。
 図は、(a)世界平均地上気温、(b)潮位計と衛星データによる世界平均海面水位の上昇、(c)三月〜四月における北半球の積雪面積それぞれの観測値の変化である。すべての変化は、一九六一年〜一九九〇年の平均からの差で、滑らかな曲線は一〇年平均値、陰影部は平均値の不確実性の幅、丸印は各年の値をそれぞれ示す。
 二十世紀後半の北半球の平均気温は、過去一三〇〇年間の内で最も高温で、最近一二年(一九九五年〜二〇〇六年)のうち、一九九六年を除く一一年の世界の地上気温は、一八五〇年以降で最も温暖な一二年の中に入ることが分かった。また、過去一〇〇年に、世界平均気温が長期的に〇.七四度(一九〇六年〜二〇〇五年)上昇。最近五〇年間の長期傾向は、過去一〇〇年のほぼ二倍となった。
 一九八〇年から一九九九年までに比べ、二十一世紀末(二〇九〇年〜二〇九九年)の平均気温上昇は、「環境の保全と経済の発展が地球規模で両立すると想定された社会」においては、約一.八度(一.一度〜二.九度)である一方、「化石エネルギー源を重視しつつ高い経済成長を実現すると想定された社会」では約四.〇度(二.四度〜六.四度)と予測された(第三次評価報告書ではこうしたシナリオを区別せず一.四度〜五.八度と報告された)。
 一九八〇年から一九九九年までに比べ、二十一世紀末(二〇九〇年〜二〇九九年)の平均海面水位上昇は、「環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する社会」においては、一八cm〜三八cmである一方、「化石エネルギー源を重視しつつ高い経済成長を実現する社会」では二六cm〜五九cmと予測している(第三次評価報告書(九cm〜八八cm)より不確実性減少)。二〇三〇年までは、社会シナリオによらず一〇年当たり〇.二度の昇温を予測した(同報告書の新見解である)。
 また、熱帯低気圧の強度は強まり、積雪面積や極域の海氷は縮小。北極海の晩夏における海氷が、二十一世紀後半までにほぼ完全に消滅するとの予測もある(同報告書の新見解である)。
 更に、大気中の二酸化炭素濃度上昇により、海洋の酸性化が進むと予測すると共に(新見解)、温暖化により、大気中の二酸化炭素の陸地と海洋への取り込みが減少するため、人為起源排出の大気中への残留分が増加する傾向がある(同報告書の新見解となる)。

グラフ
1850年から2010年の世界平均気温など

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