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平成18年2月 第2261号(2月7日)

生涯学習の振興方策 中間報告まとめる

 1面に掲載のとおり、中央教育審議会は、去る一月三十日に第五七回総会を開催して、「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について(中間報告)」を取りまとめた。同中間報告では、生涯学習社会の実現に向けた基本的考え方と重視すべき視点を示したうえで、そのための具体的方策として、@国民の学習活動の推進、A家庭・地域の教育力の向上、B地域社会全体での学習活動支援、C国・地方公共団体・大学等の今後の役割を挙げている。概要は次のとおり。

一、今後の生涯学習振興方策の基本的考え方

 (1)生涯学習を振興していく上での基本的考え方=「個人の要望」と「社会の要請」のバランスの確保、「生きがい・教養」だけでなく「職業的知識・技術」の習得の強化、知識・技能や知恵の「継承」とそれを生かした「創造」により、社会全体で生涯学習社会の実現を目指す。
 (2)今後重視すべき視点=@国民の学習活動を促進するため、国民全体の人間力の向上、「公共」の視点の重視、人の成長段階に即した多様な選択肢を提供する政策の重点化、大学等による実社会のニーズを生かした多様な学習機会の提供、情報通信技術の一層の活用が必要である。A家庭の教育力向上のため、親と子どもの主体的な「育ち合い」(共育)、地域全体での子育ての「支え合い」(共同)、多様性の認識の「分かち合い」(共生)が必要である。B地域の教育力向上のため、地域全体での子育て「支え合い」(共同)、地域の課題解決は地域自身の手で「助け合い」(共生)、家庭や地域の教育力と学校教育の効果的な連携「つながり合い」(共育)が必要である。

二、国民の学習活動を促進する具体的方策

 (1)「学び」の機会を総合的に提供・支援するシステムの構築=産学官が連携して、学習相談から社会参加までを一貫して支援する学習支援システムを構築する。
 (2)個人の「学び直し」に対する支援=産学官が連携して、情報通信技術を活用した学習コンテンツの提供や学習相談を行う活動を支援する。
 (3)学習成果が適切に生かされ評価される方策=全国レベルの生涯学習に係る登録制度の創設を検討する。将来的には、学校の卒業認定とは別に、大学等における学習成果を評価し、全国的な通用性を保証するための制度を構築する。
 (4)若年者・女性・団塊世代・高齢者に対する支援=@若年者による奉仕活動・体験活動等を推進するための窓口の設置促進やコーディネーターを養成する。A女性の再チャレンジのための支援講座等を実施する。B団塊世代や高齢者が「教育サポーター」として学校や地域で活躍する方策を検討する。
 (5)「公共」の課題に取り組む社会教育の振興=@社会教育施設の機能を充実する。A社会教育主事の職務、配置、養成の在り方を見直す。B司書等の資格や養成の在り方を見直す。C博物館登録制度や学芸員制度の在り方を見直す。

三、家庭・地域の教育力の向上に関する具体的方策

 (1)家庭の教育力向上のための具体的方策=@子育ての悩みや問題を抱える家庭に対する訪問型のきめ細かな家庭教育支援を充実する。A子どもの発達段階に応じた課題別の子育て講座をすべての親に提供する。B父親の家庭教育への参加、中・高校生と幼児やその親とのふれあいなどを通じて、親子・世代間で育ち合う子育てを応援する社会づくりを促進する。C乳幼児期からの子どもの生活リズムの向上に取り組む。D小学校区単位での家庭教育支援の環境を整備する。
 (2)地域の教育力の向上のための具体的方策=@「放課後子どもプラン」を創設し、小学校区ごとに地域の人材を配置する。A家族や地域のきずなを深める「学び合い、支え合う」学習活動を支援する。B「地域の教育力の指標」を試行的に作成する。

四、地域社会全体で学習活動を支援する具体的方策

 (1)学習活動を支援する多様な人材が育つ仕組の構築=@地域の人材が講師等として活躍する「教育サポーター」、地域の人材と学校や社会教育施設等との橋渡しをする「学習コーディネーター」、社会人の「学び直し」から社会参加までの学習相談を行う「学習相談員」を育成する。A学習支援の人材の資質・能力の全国的な通用性を確保し、有効活用を促進するため、大学等で構成する第三者機関による、人材育成・認証システムの構築を検討する。
 (2)学校・家庭・地域の連携協力を促進するための方策=教職の課程認定大学においては、家庭教育や社会教育への理解及び学校・家庭・地域の連携に対する取り組みを促進する。

五、国・地方公共団体・生涯学習関連施設・民間団体等の今後の役割等

 @国は総合的・体系的な基本方針や社会的要請が強く、取り組むことが望まれる課題等を教育振興基本計画に盛り込む。A地方公共団体は首長部局と教育委員会の連携を強化する。B大学等は多様な教育・研究機能を活用して住民の学習活動を支援する。C企業はワーク・ライフ・バランスに配慮した取り組みを推進する。

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