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平成18年11月 第2253号(11月8日)

大学経理部課長相当者研修会を開催
(株)神戸製鋼所経営企画部長 梅原氏が"震災後の再建"を講演

 経理・財務に関わる課題別研修など

 ■第一日目
 研修初日は、東海道新幹線の人身事故による大幅な遅れにより、多くの参加者の会場入りに大きな影響が出たため、開会の時間を遅らせるなどの措置が講じられた。参加者は様々に疲労の表情を浮かべていたが、理解と協力もあり、第一日目の日程を終了した。
 開会に当たり長谷川委員長は、「私立大学を取り巻く状況は、ますます厳しさを増し、大学が抱える問題も多様である。これらの問題を解決するためには、各大学の部課長相当者の資質の向上が不可欠である。今回の研修会では@基本研修、A総合研修、B設定課題別研修を設け、多様化する加盟校・参加者のニーズに応えられるようにさまざまな内容を盛り込んだ。研修会を開催するに当たり、多くの方々の協力を賜ったことに感謝を申し上げるとともに、この研修会が実りあるものとなるように期待している」と挨拶した。
 ただちに基本研修に入り、近畿大学財務部長の井倉 博同委員会委員より「学校法人・関係法令等に関する解説」が行われた後、参加者はそれぞれ会場を移動し、班別研修に入った。
 基本研修の設定テーマ、担当委員は次のとおり。【1班】学校法人会計基準のあらまし1:1. 解説「学校法人会計基準の概要」、2. 解説「帳簿組織と計算体系」、3. 演習と解説、担当=鈴木 優委員(国士舘大学財務部長)、野田恒雄委員(二松学舎大学企画・財務部長)、衣松美隆委員(広島経済大学法人部次長)、【2班】学校法人会計基準のあらまし2:解説1. 「学校法人の特殊性」@予算制度の重要性、2. 「『学校法人会計基準』ができるまで」、3. 「学校法人会計基準の概要」@基準の特色・A帳簿組織と計算体系・B基本金について、担当=徳田 守委員(金沢工業大学財務部長)、白井伸昌委員(中部大学財務部次長)、井倉委員、【3班】学校法人における予算編成管理・中長期計画関係課題:1. 解説「学校法人における予算編成管理について」、2. 事例発表「中長期財政シミュレーション事例」、担当=石田順久委員(京都外国語大学財務課長)、余語 弘委員(名城大学経営本部財政部事務部長)、瀬田高央委員(神奈川大学財務部予算課長補佐)、【4班】私立大学等経常費補助金一般補助の仕組:1. 解説「私立大学等経常費補助金の制度と仕組みについて」、2. 演習と解説「実例による一般補助計算」、担当=寺本純生委員(北里大学経理部課長)、中島和彦委員(多摩美術大学経理部長)、佐川秀夫委員(文化女子大学監事)。
 ■第二日目
 午前中は、前日の班別研修の続きが行われ、昼食後、会場を移し全体研修が行われた。開会に際し、原田担当理事は、「私立大学を取り巻く状況は厳しさを増し、今年度定員割れを起こしている大学は地方のみに留まらず首都圏にも存在する。過去一五年間に、およそ二〇〇を超える大学が誕生し、経営破たんの危機にある学校法人も増加している。この難局を乗り切るためには、職員の資質向上、経営の改善方策等が必要不可欠である。より多くのニーズに応えることができるように運営委員が検討を重ね、様々な内容を盛り込んだ研修会を企画した。この研修会は益するところが多いものと自負している。参加者のみなさんには期間中、各々の双肩に課せられている重要な任務を再認識され、より多くの成果を持ち帰ることができるよう期待している」と挨拶した。
 引き続き、同協会の小出秀文事務局長が「日本私立大学協会創立六〇周年の軌跡と今日的課題」と題して解説と報告を行った。小出事務局長はまず、私学の先達が何を思い、同協会を立ち上げたのか、六〇年の歴史に触れながら、「世界に誇る日本の学校法人という制度が、今日危機に瀕している。言い換えれば、私学の危機である」と述べた。
 小出事務局長は次に、私立大学が当面する諸課題について、被用者年金一元化問題に伴う新三階(職域加算)部分の制度設計、中途退学者の増加問題、一八歳人口の減少問題、第三期科学技術基本計画に沿った私学の発展方策、平成十六年度から義務付けられた第三者評価、及び、私立大学関係政府予算・税制改正問題等、山積する諸課題について解説するともに、私学振興方策等について述べた。
 次いで、「阪神・淡路大震災の経験と再建〜経営の選択と集中〜」と題して(株)神戸製鋼所経営企画部長の梅原尚人氏の講演が行われた。一九九〇年代前半のバブル崩壊、一九九五年の大震災、その後の金融不安を経て、同製綱所がどのような事業の選択と集中を行い、再建への道をたどったかを具体的な事例をもとに説明した。
 阪神・淡路大震災から三ヵ月間、社員・OB、取引先の人々は会社の事務所に寝泊りをしながら、寸暇を惜しんで製鉄所の復旧活動を行った。この震災により施設などが倒壊し、会社は多大な損害を被ったが、「企業=人」であり「人間が根本的に持てる力」を認識することができたと述べた。
 そして今後は、「ものづくり」の強化、若手の育成に更に力を入れていく必要があるとした。特に、オンリーワン戦略には優秀な人材が必要であり、会社は「人に金をかける」ことが大切であると締めくくった。
 続いて、渡邉秀俊文化女子大学造形学部住環境学科助教授による「文化女子大学の自己点検・評価活動〜日本高等教育評価機構の第三者評価を終了して〜」と題した講演が行われた。同氏はまず、認証評価制度の趣旨・内容・目的また同機構による認証評価の特色等を説明した後、同大学の自己点検・評価活動の経緯について、これまでに作成した三つの報告書を中心に、作業の流れ、組織、報告書が出来上がるまでのスケジュール等の報告を行った。
 同氏は、「(評価を受けるにあたり)意見をまとめあげる過程で様々な苦労もあったが、自分の大学について、各々に考えてもらう機会を持つことができたのは非常に良いことだった」とし、「評価を受けて終わりではなく、今後これをどのように生かしていくのかが最も重要である」と講演を締めくくった。
 その後行われた「情報交換会」では、原田担当理事の挨拶に続いて、大阪ガーデンパレスの浦久男館長が歓迎の挨拶をするとともに、同施設をはじめ全国の私学事業団共済施設の利用をお願いした。続いて、同協会副会長・関西支部長の森田嘉一京都外国語大学理事長・総長が関西地区・大阪での開催を歓迎し、参加者を激励した。また、全体研修で講演を行った渡邉文化女子大学助教授のほか、最終日の設定課題別研修での講師、佐藤克則日本私立学校振興・共済事業団助成部特別補助課課長補佐、南浩司同補助金課補助金第三係長、木澤 進税理士(斎藤総合税理士法人代表社員)、宮本寿生私立大学社会的責任(USR)研究会幹事長(玉川大学通信教育部通信教育事務部長)が出席し、参加者は熱心に名刺交換と情報交換等を行った。
 ■第三日目
 研修会最終日は、設定課題別に分かれての班別研修が午前九時から昼食をはさんで午後四時まで行われた。
 設定テーマ、講師、事例発表者は以下のとおり。【1(A・B)班】学校法人会計基準改正後の動向と決算の留意点:講師=佐野慶子公認会計士(日本公認会計士協会理事)、【2(A・B)班】経常費補助金・会計検査院検査関係課題:講師=佐藤克則氏、南 浩司氏、【3(A・B・C)班】収入増加方策・支出の効率化関係課題:事例発表者=田中長則委員(大阪芸術大学法人本部財務部長)、円谷幸一郎委員(東京電機大学理事・経理部長)、【4班】学校法人における税務実務の留意点:講師=木澤 進氏、【5班】私大経営の財務分析と自己点検評価:事例発表者=小村達義委員(熊本学園大学事務局次長・総務部長)、徳田委員、【6班】私立大学の社会的責任関係課題:講師=宮本寿生氏。
 初日には、予期せぬ交通機関のトラブルに巻き込まれたが、三日間の全日程を無事終了し閉会となった。

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