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平成18年9月 第2246号(9月20日)

研究活動の不正行為への対応 文部科学省がガイドライン (下)

 去る九月六日に開催された科学技術・学術審議会総会において、研究活動の不正行為に関する特別委員会が「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」の報告書を公表した。同報告書は、第一部・研究活動の不正行為に関する基本的考え方、第二部・競争的資金に係る研究活動における不正行為対応ガイドラインで構成されている。このうち第二部の概要を前号に続いて掲載する。

 ▽告発者及び被告発者に対する措置
 (1)調査中における一時的措置=被告発者が所属する研究機関は、本調査を行うことが決まった後、調査委員会の調査結果の報告を受けるまでの間、告発された研究に係る研究費の支出を停止することができる。また、告発に係る中間報告を受けた資金配分機関は、調査結果の通知を受けるまでの間、研究費の使用停止を命ずることができる。
 なお被告発者に交付決定した当該研究に係る研究費の交付停止や、既に別に被告発者から申請されている競争的資金について、採択の決定あるいは採択決定後の研究費の交付を保留(一部保留を含む)できる。
 (2)不正行為が行われたと認定された場合の緊急措置等=不正行為に係る研究に資金配分した機関と、不正行為への関与が認定された者及び不正行為が認定された論文等の内容について責任を負う者として認定された著者が所属する研究機関は、ただちに当該競争的資金の使用中止を命ずる。
 (3)不正行為は行われなかったと認定された場合の措置=本調査に際してとられた研究費支出の停止や採択の保留等の措置が解除される。告発が悪意に基づくものと認定された場合、告発者が研究機関に属する場合には、内部規程に基づき適切な処置を行う。

 ▽不正行為と認定された者に対する資金配分機関の措置
 (1)措置を検討する体制=資金配分機関は、配分した競争的資金に係る研究活動における不正行為に関する被認定者への競争的資金に係る措置を検討する委員会を、あらかじめ設置しておく。文科省においては、科学技術・学術審議会を充てることが適当である。
 (2)措置の決定手続=調査委員会は、資金配分機関の求めがあったとき検討を開始する。調査機関に対するヒアリングなどを行い、調査内容、調査の方法・手法・手順、調査委員会の構成等を確認し、速やかに措置についての検討結果を資金配分機関に報告する。
 資金配分機関は、委員会の報告に基づき、措置を決定する。なお、被認定者の弁明の聴取及び措置決定後の不服申立ての受付は行わない。
 (3)措置の対象者=(1)不正行為があったと認定された研究に係る論文等の不正行為に関与したと認定された著者(共著者を含む、以下同)。
 (2)不正行為があったと認定された研究に係る論文等の著者ではないが、当該不正行為に関与したと認定された者。
 (3)不正行為に関与したとまでは認定されないものの、不正行為があったと認定された研究に係る論文等の内容について責任を負う者として認定された著者。
 (4)措置の内容=(1)競争的資金の打切り:不正行為があったと認定された研究に係る競争的資金の配分を打切り、当該競争的資金であって、措置決定時において未だ配分されていない残りの分の研究費、あるいは次年度以降配分が予定されている研究費については、以後配分しない。
 なお、不正行為があったと認定された研究が研究計画の一部である場合、当該研究計画に係る研究全体への資金配分を打切るか否かは、措置対象者以外の研究者の取扱いを含めて委員会が判断する。
 また、認定された研究に係る競争的資金以外の、現に配分されているすべての文科省所管の競争的資金であって、措置決定時において未だ配分されていない残りの分の研究費、あるいは次年度以降配分が予定されている研究費については、(ア)不正行為があったと認定された者が研究代表者である研究については打切りとし、以後配分しない。(イ)研究分担者又は研究補助者である研究については当人による研究費使用を認めない。
(2)競争的資金申請の不採択:措置の対象者と認定された時点で、文科省所管の競争的資金で研究代表者として申請されているものは採択しない。また、研究分担者又は研究補助者として申請されているものについては、当人を除外しなければ採択しない。
(3)不正行為に係る競争的資金の返還:不正行為があったと認定された研究に配分された研究費(間接経費もしくは管理費を含む)の一部又は全部の返還を求める。返還額については、不正行為の要質性や研究計画全体に与える影響等を考慮して定める。 
(4)競争的資金の申請制限:不正行為があったと認定された者に対して、文科省所管のすべての競争的資金の申請を制限する。その期間については、重大性、悪質性及び不正行為への関与の度合いに応じて二年から十年、一年から三年と委員会が定める。
 (5)措置と訴訟との関係=(1)措置後に訴訟が提起された場合:資金配分機関が措置を行った後、調査機関に設置された調査委員会が行った不正行為の認定について訴訟が提起されても、認定が不適切である等、措置の継続が不適切であると認められる内容の裁判所の判断がなされない限り、措置は継続するものとする。
 (2)措置前に訴訟が提起された場合:措置を行う前に調査機関に設置された調査委員会による不正行為の認定について訴訟が提起された場合についても、訴訟の結果を待たずに措置を行うことを妨げない。
 (3)措置後の訴訟において認定が不適切とされた場合:措置を行った後、調査機関に設置された調査委員会による不正行為の認定が不適切であった旨の裁判が確定したときは、ただちに措置は撤回される。措置により研究費の返還がなされていた場合は、資金配分機関は、その金額を措置対象者に再交付することができる。
 (6)措置内容の公表=資金配分機関は、措置を決定したときは、原則として、措置の対象となった者の氏名・所属、措置の内容、不正行為が行われた競争的資金名及び当該研究費の金額、研究内容と不正行為の内容、調査機関が行った調査結果報告書などについて、速やかに公表する。
 なお、告発者については、告発者の了承がなければ公表しない。
 (7)措置内容等の公募要領等への記載=資金配分機関は、不正行為を行った場合に資金配分機関がとる制裁的措置の内容や措置の対象となる者の範囲について、競争的資金の公募要領や委託契約者等に記載し、研究者がそれをあらかじめ承知して応募あるいは契約するように取りはからうものとする。
(おわり)

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