加盟大学専用サイト

バックナンバー

長期実践型インターンシップを
核にしたビジネス教育カリキュラム

嘉悦大学ビジネス創造学部
准教授   白鳥成彦 小野展克
非常勤講師  田島悠史

 嘉悦大学(赤澤正人学長)では、従来の経営経済学部に加えて、2012年春に新しくビジネス創造学部を開設した。社会でのビジネス経験と教室での学びを組み合わせた「実践重視」の新しいタイプの教育を4年間にわたって行うのが特徴である。
1.プロジェクト科目の構成
 そのユニークなカリキュラムのコアとなるのが「プロジェクト科目」で、1年次後期から3年次前期まで行われるプロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)型の業界研究・インターンシップの科目である。学生は学部が用意する九つのビジネスプロジェクトから選んで、それぞれ企業と連携しながら1年半かけて実施していく。学生はプロジェクト科目と研究会の連携を通して将来の仕事・業種を理解し、キャリアデザインを考えていくとともに、実践を通して専門性を高めていく。
 プロジェクト科目は①プロジェクトエントリー、②インターンシップ、③プロジェクトの3種類の科目から構成されている。は業界研究に行く前の準備段階の授業、②と③は企業と共同で行うプロジェクトを基に業界研究を行う授業である。まず1年次後期に①が開講され、その後、3年次の夏休みまで②の4科目と③の3科目が連続して行われる。具体的には「インターンシップ1」(1年次春季休暇)、「プロジェクト1」(2年次前期)、「インターンシップ2」(2年次夏季休暇)、「プロジェクト2」(2年次後期)、「インターンシップ3」(2年次春季休暇)、「プロジェクト3」(3年次前期)、「インターンシップ4」(3年次夏季休暇)のように設置されている。最初はアルバイトやインターンシップ学生に準じた役割を行いながら、徐々に正社員の役割を担えるように一つのプロジェクトを行っていくのである。
 学外で実践するプロジェクト科目で問題を発見し、その問題を解決するべく学内の授業で学び、実践とともに専門性を身につけていく。そのプロジェクト科目と学内の専門科目を連携させる科目が「研究会」である。プロジェクト科目は教員各自が担当する研究会(ゼミ)と連携している。学外の企業と連携し学んでいくのがプロジェクト科目であり、この科目と学内の科目を連携させ、専門性を教えていくことが研究会の目的となる。学生は最初に学外での活動を行うインターンシップをし、その後、そのインターンシップで見つけた課題や疑問点を解決するべく学内で行われる科目を受講し、問題を解決していく。その後、再度インターンシップに向かい、疑問点を実践の中で解決するという形である。
 以下に、ブランド、出版、フードの三つのビジネスプロジェクトの実践内容を紹介する。
2.ブランドビジネスプロジェクト
 地域で生産した産品を利用して、学生が商品を企画・開発し、その商品を認知させ、地域産品をブランド化させていく中で、学生自身で所属している地域を活性化することを目的とする。今回は地域産品として、本学がある小平市で日本初の商業栽培が開始された果物であるブルーベリーを選択し、提携企業の株式会社生産者直売のれん会と一緒に行っている。
 全体の期間としては1年半あり、その中でブルーベリーの商品を複数開発・販売し、ブランド化していくことを考えているが、前期にはまずブルーベリーを利用した「べりべりぶるべり こだプリン」(ブルーベリープリン)を製造した。
 プリンを開発する前に、販売されている既存のブルーベリー商品を購入し、調査を行った。そこでは、ブルーベリー商品の多様性を知るとともに、賞味期限や保存方法の簡便さを考え常温で保存できるフルーツプリンを選択した。フルーツプリンの工場は提携企業に紹介してもらい、学生自身で味を調整し、何度もテストマーケティングを行った。プリンの味をもう少し甘くしたほうが良いとか酸味を加えたほうが良いとか、色の調整とかを何度も工場とやりとりをして満足する味にしあげた。その後、どのようなパッケージデザインにしたらよいのか、プリンの名前等を学生が考えブルーベリープリンを完成させた。前期に製造までこぎつけた後は夏季休暇中での販売実践である。販売目標として8月、9月の2か月間で1万個を掲げ、現在様々な場所で学生自身の手により販売を行っている。このように企画から製造、販路開拓、販売、認知までを実際に身体を動かしながら地域を活性化させていくことがブランドビジネスで行っていることである。
3.出版ビジネスプロジェクト
 講談社の協力を得ながら、学生が取材の実践に挑戦する。2年次前期に取り組んだのは、自由民主党の高市早苗政調会長ら与野党の政調会長や有力議員6人へのインタビューで、すべて講談社ウェブメディア「現代ビジネス」にシリーズ掲載された。7月の参議院議員選挙を前に若者目線で政治家から新たな言葉を引き出すことを目指した企画には大きな反響があった。取材活動は、アポ入れから始まる。政治家の秘書に、取材の意図を口頭で上手く説明し、詳細な内容を文書やメールで、しっかり伝えることが要求される。さらに、質問内容をじっくり研究し、ホームページや新聞、雑誌記事などを読み込んだ上で、若者にしか出せない切り口を絞り出した。実際の取材では、百戦錬磨の政治家たちの存在感が学生たちを圧倒。そんな中でも、「なぜ失言したのか」といった政治家が嫌がる質問も逃げずにぶつける。政治家と言葉のキャッチボールができる学生も出てきた。そして最後は記事化の作業となる。インタビューの中で、インパクトのある言葉を中心に簡潔にまとめ、規定の字数に収める編集作業に汗を流した。夏休み中のインターンシップでは、経済産業省を辞めて政治家のブレーンなどとして活躍する古賀茂明氏のロングインタビューを敢行、講談社の雑誌「g2」に掲載された。8月下旬には講談社の編集者も交えて「編集会議」が開かれ、秋以降の取材テーマの設定に向けて、学生たちがアイデアを持ち寄った。
4.フードビジネスプロジェクト
 カフェやバーなどを幅広く展開している株式会社プロントコーポレーションと提携し、フードビジネスに関する実践的な試みを行っている。これは、実際の店舗での接客や調理経験を重視しつつも、店舗経営や商品開発への挑戦も目指す。
 学生たちは、1年次春休みのインターンシップでプロントにて、社会人としての姿勢やあり方に関する研修を受けた後、2年生の4月からは①実際の店舗内での研修、②営業店舗での客層調査とマーケティング企画、に取り組んだ。特に②では、プロントコーポレーションの社長を前に、学生たちは自らの調査内容のプレゼンテーションに挑戦した。
 2年次夏休みのインターンシップでは、茨城県にある古民家カフェを2週間にかけて運営する。「過疎地域のカフェで収益を上げる」という難題に対して、学生自身は目標金額を達成するための企画立案を上記客層調査と並行して、進めてきた。具体的には、地域住民の意向などを聞いた上で、メニュー開発、企画立案、広報などに取り組んでいる。特にメニュー開発については、プロントコーポレーションの社長や社員に試食をお願いし、コメントを頂くなど、プロの視点を学びながら運営に挑む。 
 今後は、商品開発と店舗経営に関する実践的な教育を行っていく。商品開発については、本社会議に学生が参加し、開発に関わることを予定している。店舗経営についても、同社社員によるマーケティングからリスクマネジメントまで経営に関わる様々なレクチャーを予定している。